SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(SBI VTI)の評価レビュー|メリット・デメリットと初心者向け解説

SBI・V・全米株式インデックス・ファンドの投資イメージ

データ参照日:2025年1月時点

冒頭サマリ(結論)

SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(愛称:SBI VTI)は、米国株式市場全体(約4,000銘柄)に低コストで分散投資できる投資信託です。バンガード社のETF「VTI」を通じて、大型株から小型株まで幅広くカバーし、CRSP USトータル・マーケット・インデックスへの連動を目指します。

こんな人に向いています:

  • 米国株式市場全体の成長に投資したい初心者・中級者
  • S&P500よりも幅広い分散を求める投資家
  • 超低コストで長期投資を行いたい方
  • つみたてNISAや新NISAでの積立投資を検討している方
  • 中小型株の成長機会も取り込みたい投資家

経費率は年率0.0938%程度と業界最低水準で、長期保有のコストを抑えられます。ただし、米国市場に100%集中するため、地域分散を求める場合は全世界株式ファンドとの併用も検討すべきです。

商品概要

基本情報

項目 内容
商品名 SBI・V・全米株式インデックス・ファンド
愛称 SBI・V・全米株式
運用会社 SBIアセットマネジメント
設定日 2021年6月29日
投資対象 米国株式市場全体(約4,000銘柄)
ベンチマーク CRSP USトータル・マーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)
実質的な投資先 バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)
経費率(信託報酬) 年率0.0938%程度(税込)
購入時手数料 なし(ノーロード)
信託財産留保額 なし
決算日 年1回(9月14日)
つみたてNISA対象 対象
新NISA対象 対象(つみたて投資枠・成長投資枠)

商品の目的と特徴

本ファンドは、米国株式市場全体の値動きを捉えることを目的としています。S&P500が米国の大型株500銘柄に投資するのに対し、SBI VTIは大型株から小型株まで約4,000銘柄をカバーし、米国株式市場の投資可能銘柄のほぼ100%に投資します。

実質的な投資先であるバンガード社のVTI(Vanguard Total Stock Market ETF)は、世界最大級の運用会社が提供する低コストETFとして高い信頼性を誇ります。SBIアセットマネジメントは、このVTIを通じて投資することで、個人投資家でも手軽に全米株式市場へアクセスできる仕組みを提供しています。

仕組み(投資先・ベンチマーク・構成・リスク構造)

投資の仕組み

SBI VTIは「ファンド・オブ・ファンズ形式」を採用しています。投資家から集めた資金で、バンガード社のETF「VTI」を購入し、間接的に米国株式市場全体に投資する構造です。

投資フロー:

  1. 投資家がSBI VTIを購入
  2. SBIアセットマネジメントがVTI(米国ETF)を購入
  3. VTIが米国株式市場の約4,000銘柄に投資
  4. 米国株式市場の値動きがリターンとして投資家に還元される

ベンチマークと投資対象指数

本ファンドが連動を目指すCRSP USトータル・マーケット・インデックスは、米国株式市場に上場する投資可能銘柄のほぼすべてをカバーする時価総額加重型の株価指数です。

CRSP(Center for Research in Security Prices)とは:シカゴ大学が運営する金融データ提供機関で、学術的にも高い信頼性を持つ指数を算出しています。

構成銘柄と地域

項目 内容
投資地域 米国100%
銘柄数 約4,000銘柄
時価総額カバー率 米国株式市場の約100%
大型株比率 約80〜85%
中小型株比率 約15〜20%

主要セクター構成(VTI基準、2025年1月時点の参考値):

  • 情報技術:約30〜35%
  • 金融:約12〜15%
  • ヘルスケア:約12〜14%
  • 一般消費財:約10〜12%
  • 通信サービス:約8〜10%
  • 資本財:約8〜10%
  • その他セクター:約15〜20%

主要組入銘柄(VTI上位保有銘柄、参考):

  1. Apple(アップル)
  2. Microsoft(マイクロソフト)
  3. Nvidia(エヌビディア)
  4. Amazon(アマゾン)
  5. Alphabet(グーグル)

※構成比率は市場環境により変動します。

リスク構造

本ファンドには以下のリスクが存在します:

  • 価格変動リスク:株式市場の変動により基準価額が上下します
  • 為替変動リスク:米ドル/円の為替レートの変動が運用成績に影響します(為替ヘッジなし)
  • 信用リスク:投資先企業の経営悪化や倒産による損失リスク
  • カントリーリスク:米国の政治・経済・社会情勢の変化による影響
  • 流動性リスク:市場の混乱時に売買が困難になる可能性

リスク水準:中〜高(株式100%のため、価格変動は大きくなります)

メリット

1. 超低コストで米国株式市場全体に投資できる

経費率(信託報酬)は年率0.0938%程度と業界最低水準です。長期投資においてコストは複利で効いてくるため、この低コストは大きなアドバンテージになります。

なぜ重要なのか:20年間の投資で、経費率0.1%と0.5%の差は、最終リターンで数十万円〜数百万円の差を生む可能性があります。

2. S&P500よりも広範な分散投資が可能

S&P500が大型株500銘柄に限定されるのに対し、SBI VTIは約4,000銘柄をカバーし、中小型株の成長機会も取り込めます。歴史的に中小型株は大型株を上回るリターンを生む期間もあり、より幅広い市場へのアクセスは分散効果を高めます。

なぜ重要なのか:特定の大型株に偏らず、次世代の成長企業にも投資できるため、長期的な成長機会を逃しにくくなります。

3. バンガード社の信頼性と実績

実質的な投資先であるVTIは、世界最大級の運用会社バンガード社が提供するETFで、運用資産は数兆ドル規模に達します。透明性が高く、低コスト運用の先駆者として世界中の投資家から信頼されています。

なぜ重要なのか:運用会社の信頼性は、長期投資において安心材料となり、予期せぬ運用方針変更のリスクを低減します。

4. つみたてNISA・新NISA対応で税制優遇を活用できる

本ファンドは金融庁の基準をクリアし、つみたてNISAおよび新NISAの対象商品です。運用益が非課税になるため、長期投資の複利効果を最大化できます。

なぜ重要なのか:通常は運用益に約20%の税金がかかりますが、NISA制度を活用すればこの税金が免除され、手取りリターンが大幅に向上します。

5. 購入・売却手数料が無料(ノーロード)

購入時手数料、信託財産留保額ともに無料です。頻繁に売買することは推奨されませんが、必要に応じて柔軟に資金を引き出せる点は安心材料です。

なぜ重要なのか:手数料がかからないため、少額からでも気軽に積立投資を始められ、投資のハードルが下がります。

デメリット

1. 米国市場に100%集中するリスク

本ファンドは米国株式のみに投資するため、米国経済や米ドルの動向に運用成績が完全に依存します。米国経済の停滞や政治的混乱が発生した場合、大きな損失を被る可能性があります。

リスクの具体例:2008年の金融危機では、米国株式市場は1年で約50%下落しました。地域分散をしていない場合、こうした急落を丸ごと受け止めることになります。

2. 為替変動リスクが運用成績に大きく影響

本ファンドは為替ヘッジを行わないため、円高局面では米ドル建て資産の円換算価値が目減りします。例えば、米国株が10%上昇しても、円が10%上昇(ドル安円高)すれば、円ベースのリターンはゼロになる可能性があります。

誤解を避けるために:為替変動は短期的にはリスクですが、長期投資では分散効果として働く側面もあります。円安局面では逆に大きなプラス効果をもたらします。

3. S&P500と比較してリターンが劣る可能性

歴史的には、S&P500(大型株中心)のリターンが全米株式市場を上回る期間が多く見られます。特に大型ハイテク株が牽引する相場では、中小型株を含むVTIはS&P500に劣後する傾向があります。

リスクの具体例:2010年代の米国株上昇相場では、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)などの大型株がリターンを牽引し、S&P500がVTIをわずかに上回る場面が見られました。

4. 新興国・先進国(米国外)の成長機会を逃す

世界経済における米国のGDPシェアは約25%程度であり、残り75%の成長機会にはアクセスできません。特に新興国の高成長や欧州・アジアの優良企業への投資機会を逃すことになります。

リスクの具体例:2000年代前半には新興国株式が米国株を大幅にアウトパフォームした時期があり、地域分散がリターン向上に寄与しました。

5. 短期的な価格変動が大きい

株式100%のポートフォリオであるため、市場急落時には基準価額が30〜50%下落する可能性があります。短期的な値動きに耐えられないメンタルの投資家には不向きです。

誤解を避けるために:短期的な変動は長期投資において避けられませんが、過去の歴史を見れば15年以上の投資期間ではプラスリターンになる確率が高まります。ただし、これは将来を保証するものではありません。

他商品との比較

SBI VTIと類似する商品を比較します。

商品名 投資対象 経費率 銘柄数 特徴
SBI・V・全米株式
(SBI VTI)
米国株式市場全体 0.0938% 約4,000 中小型株も含む全米カバー、超低コスト
SBI・V・S&P500 米国大型株500銘柄 0.0938% 約500 大型株に集中、実績豊富
eMAXIS Slim
米国株式(S&P500)
米国大型株500銘柄 0.09372% 約500 業界最低コスト競争の先駆者
楽天・全米株式
インデックス・ファンド
米国株式市場全体 0.162% 約4,000 VTI投資、SBI VTIよりコスト高
eMAXIS Slim
全世界株式
(オール・カントリー)
全世界株式
(約3,000銘柄)
0.05775% 約3,000 米国約60%+先進国+新興国、地域分散

比較のポイント

  • SBI VTI vs S&P500:中小型株を含むか、大型株に集中するかの違い。歴史的にはS&P500がリターンで優位な期間が多いが、分散効果ではVTIが有利
  • SBI VTI vs 楽天VTI:同じVTIに投資するが、SBI VTIの方が経費率が低く、コスト面で優位
  • SBI VTI vs オールカントリー:米国集中 vs 地域分散。リスク許容度と投資方針による選択

初心者向けの注意点

誤解されやすいポイントの補足

1. 「全米」=「全世界」ではない

「全米株式」とは米国株式市場全体を意味し、全世界の株式を指すものではありません。日本、欧州、新興国などの株式は含まれていないため、地域分散を求める場合は「全世界株式(オールカントリー)」を選ぶ必要があります。

2. VTIを直接買うのとSBI VTIの違い

VTIは米国市場に上場するETFで、購入には米国株取引口座と外貨が必要です。一方、SBI VTIは日本の投資信託として円で購入でき、100円から積立可能、NISAにも対応しています。初心者には圧倒的にSBI VTIが便利です。

3. 「低コスト」でも運用成績がマイナスになることはある

低コストは長期的に有利ですが、市場が下落すれば基準価額は下がります。低コストだから損をしないという誤解は禁物です。

4. 「つみたてNISA対象」=「安全」ではない

つみたてNISA対象商品は金融庁の基準をクリアしていますが、これは「長期・積立・分散投資に適している」という意味であり、元本保証や安全性を保証するものではありません。

5. 為替ヘッジなしの意味

為替ヘッジがないため、円高時には不利、円安時には有利になります。長期投資では為替変動もリターンの一部として受け入れる姿勢が重要です。

ポートフォリオ例(用途の例であり推奨ではない)

以下は投資戦略の参考例です。個別の投資判断は自己責任で行ってください。

ケース1:米国株式集中型(積極型)

  • SBI VTI:100%
  • 想定投資家:リスク許容度が高く、米国市場の長期成長を信じる若年層
  • 注意点:地域分散がないため、米国市場の停滞時には大きな影響を受けます

ケース2:米国株式+全世界株式(バランス型)

  • SBI VTI:50%
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):50%
  • 想定投資家:米国の成長性を重視しつつ、地域分散も確保したい中級者
  • 注意点:オールカントリーにも米国株が約60%含まれるため、実質的に米国比率が高くなります

ケース3:株式+債券(安定重視型)

  • SBI VTI:60%
  • eMAXIS Slim 先進国債券インデックス:30%
  • 現金・預金:10%
  • 想定投資家:価格変動を抑えつつリターンも狙いたい40〜50代
  • 注意点:債券は株式と逆相関しやすく、リスク分散効果が期待できますが、リターンは低下します

ケース4:つみたてNISA満額活用(初心者向け)

  • SBI VTI:毎月33,333円積立(年間40万円)
  • 想定投資家:つみたてNISA枠を活用し、長期で資産形成を目指す初心者
  • 注意点:短期の値動きに一喜一憂せず、積立を継続することが成功の鍵です

よくある質問(FAQ)

Q1. SBI VTIとSBI V S&P500、どちらを選ぶべきですか?

A. どちらも優れた商品で、明確な優劣はありません。中小型株も含めた幅広い分散を求めるならSBI VTI、大型株中心で実績重視ならS&P500がおすすめです。歴史的にはS&P500の方がリターンで優位な期間が多いですが、将来は不確実です。迷ったら、どちらか一方に絞るか、両方を半分ずつ保有する方法もあります。

Q2. 毎月いくらから積立できますか?

A. 多くの証券会社で100円から積立可能です。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券で取り扱いがあります。まずは少額から始めて、慣れてきたら金額を増やす方法が初心者には安心です。

Q3. 為替ヘッジありの商品を選ぶべきですか?

A. 長期投資であれば為替ヘッジなし(本ファンド)が推奨されます。為替ヘッジにはコストがかかり、長期では為替変動はリターンの一部として分散効果をもたらすためです。ただし、短期的な円高リスクを避けたい場合は為替ヘッジありの商品も選択肢になります。

Q4. 暴落時にはどうすればいいですか?

A. 長期投資の前提であれば、売却せずに積立を継続することが推奨されます。過去の金融危機を見ても、市場は数年で回復し、新たな高値を更新してきました。暴落時は「安く買えるチャンス」と捉え、冷静に対応することが重要です。ただし、生活資金には手を付けず、余裕資金で投資することが前提です。

Q5. 配当金は受け取れますか?

A. 本ファンドは配当金を自動的に再投資する仕組みです。分配金は原則として出さない方針(年1回の決算で実績により分配される可能性はありますが、これまで分配実績はほぼありません)。配当金を定期的に受け取りたい場合は、高配当株式ファンド(例:楽天VYM)を選ぶ必要があります。

Q6. SBI VTIと楽天VTIの違いは何ですか?

A. どちらも同じバンガードのVTIに投資しますが、経費率がSBI VTIの方が低い(0.0938% vs 0.162%)ため、長期的にはSBI VTIが有利です。すでに楽天VTIを保有している場合、乗り換えるかどうかは保有額と今後の積立期間を考慮して判断してください。

まとめ

  • SBI VTIは、米国株式市場全体(約4,000銘柄)に低コストで分散投資できる優れた投資信託
  • 経費率0.0938%は業界最低水準で、長期投資のコスト優位性が高い
  • S&P500よりも幅広い分散が可能で、中小型株の成長機会も取り込める
  • つみたてNISA・新NISA対応で税制優遇を最大限活用できる
  • 米国市場に100%集中するため、地域分散リスクには注意が必要
  • 為替ヘッジなしのため、円高局面では不利、円安局面では有利になる
  • 短期的な価格変動は大きいが、長期投資の前提であれば十分に検討価値がある
  • S&P500との優劣は明確ではなく、投資方針とリスク許容度に応じて選択すべき

免責事項

本記事は投資助言や特定商品の推奨を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記事中のデータや情報は2025年1月時点のものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があることをご理解ください。

詳細な商品情報は、SBIアセットマネジメントの公式サイトや目論見書で必ずご確認ください。

カマタ

カマタ

はじめまして、カマタです。
これまで学んできた投資の知識を少しでも誰かの役に立てられればと思い、このブログを始めました。
無理なく続けながら、分かりやすい情報を発信していきます。

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