SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド(SBI-VIG)の評価レビュー|メリット・デメリットと初心者向け解説

米国の増配株式に投資するイメージ

データ参照日:2025年11月時点

冒頭サマリ(結論)

SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド(愛称:SBI-VIG)は、10年以上連続して増配を続けてきた米国の優良企業に投資できる低コストなインデックスファンドです。バンガード社のETF「VIG」を通じて、安定した配当成長を実現してきた約300社に分散投資します。

このファンドは以下のような方に向いています:

  • 長期的な資産形成を目指す投資初心者:値動きが比較的穏やかで、長期保有に適している
  • 配当成長に魅力を感じる方:高配当ではなく「増配継続」を重視する投資スタイル
  • 市場の下落局面に強い銘柄を求める方:ディフェンシブな特性を持つ優良企業中心
  • 低コストで分散投資したい方:経費率0.1238%程度と業界最低水準のコスト

ただし、S&P500やNASDAQ100のようなハイテク株中心のファンドと比べると、リターンは控えめになる傾向があります。爆発的な成長よりも、着実な資産形成を好む方に適した商品です。

商品概要

基本情報

項目 内容
商品名 SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド
愛称 SBI-VIG
運用会社 SBIアセットマネジメント
設定日 2023年6月8日
投資対象 米国の連続増配株式
ベンチマーク S&P米国ディビデンド・グロワーズ・インデックス(円換算ベース)
投資先ETF バンガード・米国増配株式ETF(ティッカー:VIG)
経費率(実質コスト) 年率0.1238%程度(税込)
信託報酬 年率0.1238%程度(税込)
購入時手数料 なし(ノーロード)
信託財産留保額 なし
決算頻度 年1回(9月12日)
つみたて投資枠 対象
成長投資枠 対象

投資目的

このファンドは、米国市場において10年以上連続して配当を増額してきた企業に投資することで、長期的な株価上昇と配当成長の両方を狙います。投資先は「バンガード・米国増配株式ETF(VIG)」という米国上場のETFで、日本の投資家が手軽に米国の優良増配株に投資できる仕組みです。

増配を継続できる企業は、安定したビジネスモデルと強固な財務基盤を持っていることが多く、景気後退局面でも比較的値動きが穏やかな傾向があります。

仕組み(投資先・ベンチマーク・構成・リスク構造)

投資の仕組み

SBI-VIGは「ファンド・オブ・ファンズ」形式を採用しており、投資家の資金を「SBI・V・米国増配株式マザーファンド」に集約し、そこから米国ETFの「VIG」に投資します。

投資フロー:

  1. 投資家がSBI-VIGを購入
  2. 資金がマザーファンドに集約される
  3. マザーファンドがVIG(米国ETF)を購入
  4. VIGが米国の約300社の増配株に投資

ベンチマークとインデックス

ベンチマークは「S&P米国ディビデンド・グロワーズ・インデックス」です。このインデックスは以下の基準で銘柄を選定しています:

  • 10年以上連続増配の実績がある米国企業
  • 一定の流動性と時価総額の基準を満たす企業
  • REITは除外される
  • 約290~310銘柄で構成(2025年11月時点で約300銘柄)

主要構成銘柄(2025年11月時点の参考情報)

VIGの組入上位銘柄は以下のような優良企業です(構成比率は変動します):

順位 銘柄名 セクター おおよその構成比
1 マイクロソフト(MSFT) 情報技術 約4%
2 アップル(AAPL) 情報技術 約3%
3 ブロードコム(AVGO) 情報技術 約3%
4 JPモルガン・チェース(JPM) 金融 約3%
5 ユナイテッドヘルス(UNH) ヘルスケア 約2%
6 ビザ(V) 金融 約2%
7 マスターカード(MA) 金融 約2%
8 ホーム・デポ(HD) 一般消費財 約2%
9 プロクター・アンド・ギャンブル(PG) 生活必需品 約2%
10 コストコ(COST) 生活必需品 約2%

※構成比率は定期的に見直されるため、最新情報は運用会社の月次レポートでご確認ください。

セクター構成

VIGのセクター別構成比率(2025年11月時点の参考値):

セクター 構成比率
金融 約20%
情報技術 約19%
ヘルスケア 約14%
資本財 約13%
生活必需品 約11%
一般消費財 約10%
その他 約13%

S&P500と比較すると、情報技術セクターの比率が低く、金融・ヘルスケア・生活必需品など安定セクターの比率が高いのが特徴です。

リスク構造

リスクレベル:中程度(5段階中3)

このファンドは株式100%の商品ですが、以下の理由で値動きは比較的穏やかです:

  • 成熟企業中心:長年増配を続けてきた財務健全な企業が中心
  • ディフェンシブセクターの比率が高い:生活必需品、ヘルスケア、公益事業など景気に左右されにくいセクター
  • ハイテク株の比率が抑えられている:値動きの激しい新興テック企業は少ない

ただし、以下のリスクには注意が必要です:

  • 為替リスク:米ドル建て資産のため、円高時には基準価額が下落
  • 株式市場リスク:市場全体が下落する局面では当然下落する
  • カントリーリスク:米国市場に100%集中投資しているため、米国固有のリスクを受ける

メリット

1. 業界最低水準の超低コスト

経費率(実質コスト)は年率0.1238%程度と、米国株式ファンドの中でも最安クラスです。長期投資において、コストの差は最終リターンに大きく影響します。

なぜ重要か:20年間の投資で、コストが0.5%違うだけで最終的な資産額に10%以上の差が生まれることがあります。

2. 質の高い企業に投資できる

10年以上連続増配という厳しい基準をクリアした企業のみに投資するため、財務的に健全で競争力のあるビジネスモデルを持つ企業が自動的に選別されます。

なぜ重要か:増配を続けられる企業は、安定したキャッシュフローと株主還元の意識が高く、長期的な株価上昇が期待できます。

3. 市場下落時の耐性が比較的高い

過去のデータでは、VIGは市場の下落局面でS&P500よりも下落幅が小さい傾向があります。これは、成熟した優良企業が中心で、投資家が安全資産として保有し続けるためです。

なぜ重要か:投資初心者にとって、大きな下落は精神的な負担となり、狼狽売りの原因になります。値動きが穏やかな方が長期保有しやすいです。

4. つみたてNISA・新NISA対応で税制優遇

つみたて投資枠・成長投資枠の両方で購入可能なため、最長20年間の非課税運用が可能です。年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)の枠を活用できます。

なぜ重要か:運用益や分配金が非課税になることで、複利効果が最大化され、資産形成の効率が大幅に向上します。

5. 約300社への分散投資でリスク軽減

個別株投資と異なり、1つのファンドで米国の優良企業約300社に分散投資できます。個別企業の倒産リスクや業績悪化リスクが分散されます。

なぜ重要か:初心者が個別株を選ぶのは難しく、1社に集中投資するリスクは非常に高いです。分散投資は投資の基本原則です。

デメリット

1. リターンは市場平均を下回る可能性

VIGの過去リターンは、S&P500やNASDAQ100と比較するとやや控えめです。特に、テクノロジー株が大きく上昇する局面では、S&P500に劣後する傾向があります。

リスクの明確化:「増配株=必ず儲かる」わけではありません。成長性よりも安定性を重視した結果、短期的な値上がり益は期待しにくいです。

2. 配当利回りは高配当ファンドより低い

VIGの配当利回りは約1.5~2%程度で、高配当ETFのVYM(約3%)やSPYD(約4%)と比べると低めです。「増配」にフォーカスしているため、現在の配当利回りは控えめです。

リスクの明確化:「配当狙い」で投資する方には不向きです。今すぐの配当収入よりも、長期的な配当成長を狙う商品です。

3. 米国市場への集中投資リスク

投資先が米国株式のみのため、米国経済の低迷や米ドル安の影響を強く受けます。地政学リスクや米国固有の政策リスクも存在します。

リスクの明確化:全世界株式(オールカントリー)のような地域分散はありません。米国一極集中のリスクを理解しておく必要があります。

4. 為替リスクの影響を受ける

米ドル建て資産のため、円高になると基準価額が下落します。例えば、株価が上昇していても、ドル円が150円から130円に円高になれば、円ベースのリターンは減少します。

リスクの明確化:為替ヘッジはありません。為替変動が運用成果に大きく影響することを理解しておく必要があります。

5. 設定から日が浅く、長期実績が不足

SBI-VIGは2023年6月設定のため、まだ2年程度の運用実績しかありません。投資先のVIG自体は2006年設定で長い歴史がありますが、ファンドとしての実績は限定的です。

リスクの明確化:運用会社の方針変更や、予期せぬトラッキングエラー(ベンチマークとの乖離)が発生する可能性はゼロではありません。

他商品との比較

似た米国株式ファンドとの比較表です:

項目 SBI-VIG
(増配株)
SBI-VYM
(高配当株)
SBI-V・S&P500 SBI-VTI
(全米株式)
投資対象 10年以上連続増配株
約300銘柄
高配当株
約400銘柄
S&P500
約500銘柄
全米株式
約4,000銘柄
経費率 0.1238% 0.1238% 0.0938% 0.0938%
配当利回り 約1.5~2% 約3% 約1.3% 約1.4%
リターン(過去10年・年率) 約11~12%
(VIG実績)
約10~11%
(VYM実績)
約12~14% 約12~13%
ボラティリティ 中程度 中程度 中~高 中~高
ハイテク比率 約19% 約7% 約30% 約28%
下落耐性 やや強い 強い 普通 普通
向いている人 ・配当成長重視
・質の高い企業に投資したい
・中長期の資産形成
・配当収入重視
・バリュー株好き
・ディフェンシブ志向
・米国大型株中心
・市場平均狙い
・バランス重視
・最大分散
・中小型株も含めたい
・米国市場全体

比較のポイント

  • SBI-VIG vs SBI-VYM:VIGは「増配継続」、VYMは「高配当」がテーマ。現在の配当収入を重視するならVYM、将来の配当成長を重視するならVIG
  • SBI-VIG vs S&P500:S&P500の方がハイテク比率が高く、過去リターンもやや上。ただし値動きは荒い。安定性を求めるならVIG
  • SBI-VIG vs VTI:VTIは中小型株も含む全米投資。分散性はVTIが上だが、銘柄の質はVIGが厳選されている

初心者向けの注意点

誤解されやすいポイント

1. 「増配株=安全」ではない

増配を続けてきた企業でも、業績悪化や経営判断で減配・無配になる可能性はあります。特にリーマンショック時には、多くの優良企業が減配を余儀なくされました。「絶対に安全」な投資商品は存在しません。

2. 配当金は自動的に再投資される

このファンドは年1回決算ですが、分配金は基本的に出さない方針(再投資型)です。配当金を受け取りたい方は、分配金が出る別の商品を選ぶ必要があります。

3. 短期投資には向かない

このファンドの真価は10年以上の長期保有で発揮されます。短期的な値上がり益を狙う商品ではなく、時間をかけて複利効果を享受する商品です。

4. S&P500より劣る時期もある

特にテクノロジー株が強い上昇相場では、VIGはS&P500に劣後します。「常に勝てる」わけではないことを理解しておきましょう。

5. 為替ヘッジはない

円高・円安の影響をそのまま受けます。為替リスクを避けたい方は、国内株式ファンドや為替ヘッジ型を検討してください。

ポートフォリオ例

※以下は用途の例であり、推奨ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。

パターン1:バランス重視型(初心者向け)

  • SBI-VIG(米国増配株):30%
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー):50%
  • eMAXIS Slim 先進国債券:20%

特徴:世界分散をベースに、安定性の高い米国増配株を加えたバランス型。債券で値動きを抑える。

パターン2:米国株集中型(積極運用)

  • SBI-VIG(米国増配株):40%
  • SBI-V・S&P500:40%
  • SBI-VYM(米国高配当株):20%

特徴:米国株に集中しつつ、成長株(S&P500)と配当株(VIG+VYM)でバランスを取る。

パターン3:ディフェンシブ重視型(リスク抑制)

  • SBI-VIG(米国増配株):50%
  • SBI-VYM(米国高配当株):30%
  • eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX):20%

特徴:配当株中心で安定性を重視。国内株も加えて為替リスクを分散。

パターン4:シンプル一本化(手間なし)

  • SBI-VIG(米国増配株):100%

特徴:「米国の優良企業に長期投資」というシンプルな戦略。商品選びに悩まない。

よくある質問(FAQ)

Q1. SBI-VIGと楽天VYMの違いは何ですか?

A. SBI-VIGは「10年以上連続増配」が基準で、配当の成長性を重視します。一方、楽天VYMは「配当利回りの高さ」が基準で、現在の配当収入を重視します。VIGの方が情報技術セクターの比率が高く、VYMはエネルギーやバリュー株が多い傾向です。将来の成長を取るならVIG、今の配当を取るならVYMです。

Q2. 月々いくらから積み立てできますか?

A. SBI証券や楽天証券では100円から積立投資が可能です。まずは少額から始めて、慣れてきたら金額を増やすのがおすすめです。新NISAのつみたて投資枠なら、月10万円(年120万円)まで非課税で積み立てできます。

Q3. 分配金は出ますか?

A. このファンドは原則として分配金を出さない方針です。ファンド内で自動的に再投資されるため、複利効果を最大化できます。配当金を受け取りたい方は、「SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド(年4回決算型)」という分配金が出るバージョンもあります。

Q4. S&P500と比べてどちらがいいですか?

A. 一概には言えませんが、過去のトータルリターンではS&P500がやや上回る傾向があります。ただし、VIGは下落局面での耐性が高く、値動きが穏やかです。リスクを抑えたい方や、質の高い企業に投資したい方にはVIGが向いています。リターン重視ならS&P500、安定性重視ならVIGと考えてください。

Q5. 為替リスクが心配です。どうすればいいですか?

A. 為替リスクを完全に避けることはできませんが、以下の方法で軽減できます:

  • 長期投資で為替変動を平準化:20年以上保有すれば、為替の影響は薄れる
  • 積立投資でドルコスト平均法:円高・円安の影響を分散
  • 国内資産との分散:日本株や日本債券も組み合わせる

Q6. 今から始めても遅くないですか?(タイミングについて)

A. 長期投資において、タイミングはそれほど重要ではありません。過去のデータでは、「最適なタイミング」を狙うよりも、「できるだけ早く始めて長く続ける」方が良い結果につながることが多いです。市場の下落を待っているうちに、上昇相場を逃すリスクもあります。まずは少額から始めて、積立投資で時間分散するのが賢明です。

まとめ

  • SBI-VIGは、10年以上連続増配の米国優良企業約300社に投資できる低コストファンド
  • 経費率0.1238%と業界最低水準で、長期投資に適したコスト構造
  • 安定した配当成長と株価上昇の両方を狙える「配当成長株投資」の代表格
  • 市場下落時の耐性が比較的高く、値動きが穏やかで初心者にも保有しやすい
  • S&P500よりリターンは控えめだが、質の高い企業に厳選投資できる
  • 配当利回りは約1.5~2%で高配当ファンドより低い。現在の配当収入より将来の成長重視
  • 米国市場への集中投資のため、米国リスクと為替リスクを受ける
  • 新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)対応で税制優遇を最大活用できる
  • 短期投資には向かず、10年以上の長期保有で真価を発揮
  • 「増配株=絶対安全」ではない。リスクを理解した上で投資判断を

免責事項

本記事は投資の参考情報を提供するものであり、特定の商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。

記事内のデータおよび情報は2025年11月時点のものであり、今後変更される可能性があります。最新の情報は、運用会社の公式サイトや目論見書でご確認ください。

投資にはリスクが伴い、元本が保証されるものではありません。市場環境や為替変動により、損失が発生する可能性があります。投資を行う際は、必ず目論見書や契約締結前交付書面をよく読み、内容を十分に理解した上で、ご自身の判断と責任において行ってください。

ご不明な点がある場合は、専門家(ファイナンシャルプランナーや投資顧問など)にご相談いただくことをお勧めします。

カマタ

カマタ

はじめまして、カマタです。
これまで学んできた投資の知識を少しでも誰かの役に立てられればと思い、このブログを始めました。
無理なく続けながら、分かりやすい情報を発信していきます。

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