SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)の評価レビュー|メリット・デメリットと初心者向け解説

投資バランス ポートフォリオ 米国株式と債券

データ参照日:2025年4月30日

冒頭サマリ(結論)

SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)(愛称:まるっと米国)は、米国株式と米国債券を50:50で保有するバランスファンドです。このファンドは、以下のような方に適しています:

  • 投資初心者で、米国市場にバランスよく分散投資したい方 — 株式と債券を自動で均等に調整してくれるため、リバランスの手間が不要
  • 株式100%の値動きに耐えられない方 — 債券50%を組み込むことで、株式のみのファンドより値動きが穏やか
  • 低コストで米国資産に投資したい方 — 信託報酬0.0938%程度(年率)は、バランスファンドの中でも業界最低水準
  • つみたてNISA・新NISAで長期運用を考えている方 — 成長投資枠対象で、長期・分散・低コスト投資に適している

ただし、全世界分散ではなく米国一国への集中投資であること、為替リスクを直接受けること、株式100%ファンドより期待リターンは低いことを理解した上で検討する必要があります。

商品概要(目的・特徴)

SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)は、SBIアセットマネジメントが運用する追加型投信で、2022年3月22日に設定されました。

このファンドの最大の特徴は、国内初となる米国株式と米国総合債券に均等投資を行うバランスファンドである点です。具体的には、以下のようなETF(上場投資信託)を組み合わせて運用されています:

  • 株式部分(約50%):iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(IVV)など、米国株式市場全体をカバーするETF
  • 債券部分(約50%):iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)など、米国の投資適格債券をカバーするETF

運用会社のSBIアセットマネジメントは、配分比率が基本配分比率(50:50)から乖離した場合、定期的にリバランス(調整)を実施します。投資家は何もしなくても、常に株式50%・債券50%の資産配分が維持される仕組みです。

為替ヘッジは行わないため、米ドル建て資産の値動きに加え、円とドルの為替変動の影響も受けます。

仕組み(投資先・ベンチマーク・構成国・リスク構造)

このファンドは、ファンド・オブ・ファンズ方式を採用しており、「SBI・iシェアーズ・米国バランスマザーファンド」を通じて、ブラックロック社が運用する米国ETFに投資します。

投資対象の詳細

項目 内容
投資地域 米国
投資対象 米国株式(約50%)、米国債券(約50%)
株式ベンチマーク S&P 500指数など
債券ベンチマーク ブルームバーグ米国総合債券インデックス
為替ヘッジ なし(為替変動の影響を受ける)
リバランス 自動実施(50:50に維持)
信託報酬(年率) 0.0938%程度(税込)
純資産総額 約53.34億円(2025年11月28日時点)
設定日 2022年3月22日

リスク構造

このファンドのリスク水準は中程度です。株式100%のファンドと比較すると、債券50%を組み込むことで値動きの振れ幅(ボラティリティ)が抑えられます。ただし、以下のようなリスクが存在します:

  • 価格変動リスク:株式市場・債券市場の変動により基準価額が上下する
  • 為替変動リスク:円高・円安により、円ベースのリターンが大きく変動する
  • 信用リスク:投資先の債券発行体が債務不履行(デフォルト)を起こすリスク(ただし投資適格債券中心のため比較的低い)
  • 金利変動リスク:金利上昇により債券価格が下落するリスク
  • 地域集中リスク:米国経済・政治・社会情勢の影響を直接受ける

メリット(3〜5個)

1. 業界最低水準の信託報酬(0.0938%程度)

バランスファンドとして極めて低コストです。同様のバランスファンドでは0.15%〜0.3%程度の信託報酬がかかることが多い中、このファンドは0.0938%程度と非常に競争力があります。長期投資においてコストの差は複利効果で大きな差を生むため、低コスト運用は重要なメリットです。

2. 自動リバランスで初心者にも運用しやすい

株式と債券の比率を50:50に自動調整してくれるため、投資家自身がリバランスを行う手間が不要です。市場が上昇して株式比率が上がれば、自動的に株式を売却して債券を買い増します。逆に市場が下落すれば、債券を売って株式を買い増すことで、「高値で利益確定、安値で買い増し」を自動実行してくれます。

3. 株式100%より値動きがマイルド

債券を50%組み込むことで、株式市場の急落時にも資産全体の下落幅が緩和されます。例えば、株式市場が20%下落した場合でも、債券部分が安定していれば、ファンド全体の下落は10%程度に抑えられる可能性があります。心理的な安心感を得ながら投資を継続しやすいのは大きなメリットです。

4. 米国の成長性と安定性を両取り

米国は世界最大の経済大国であり、株式市場は長期的に成長を続けてきた実績があります。同時に、米国債は世界で最も安全な資産の一つと見なされています。このファンドは、米国株式の成長性と米国債券の安定性を同時に享受できる設計です。

5. 新NISA成長投資枠対象で税制優遇を受けられる

このファンドは新NISAの成長投資枠対象です。年間240万円まで非課税で投資でき、売却益や分配金が非課税になります。長期的な資産形成において税制優遇は非常に重要であり、このメリットを活用できるのは大きな利点です。

デメリット(3〜5個)

1. 米国一国への集中投資リスク

このファンドは米国資産のみに投資します。もし米国経済が長期的に停滞したり、米国市場が他地域に比べて劣後したりした場合、分散効果が限定的です。全世界分散(オールカントリーなど)と比較すると、地域リスクが高いと言えます。

2. 為替リスクをダイレクトに受ける

為替ヘッジを行わないため、円高が進むと円ベースのリターンが目減りします。例えば、米ドル建てで10%上昇しても、円が10%上昇(円高)すれば、円ベースではほぼゼロリターンになる可能性があります。為替変動は予測が難しく、短期的には大きな変動要因となります。

3. 株式100%ファンドより期待リターンは低い

債券を50%組み込むことで安定性は増しますが、その分だけ株式のリターンを享受できる割合が減ります。歴史的に見て、株式の長期リターンは債券を上回ってきたため、超長期で見れば株式100%ファンドより運用成績が劣る可能性があります。

4. 金利上昇局面では債券部分が下落リスク

債券価格は金利と逆相関の関係にあります。金利が上昇すると、既発債券の価格は下落します。特に2022年以降、米国では急速な利上げが行われ、債券市場は大きく下落しました。金利上昇局面では債券部分がマイナスリターンを生む可能性があり、株式と債券が同時に下落する「逆相関の崩れ」が発生するリスクがあります。

5. 運用歴が比較的浅い

このファンドは2022年3月設定と、運用歴が約3年です。長期的なパフォーマンスや市場の暴落時の挙動を十分に検証できていません。また、純資産総額も約53億円と、他の人気ファンド(数兆円規模)と比べると小規模です。将来的な繰上償還(運用終了)のリスクはゼロではありません(ただし現時点では安定的に資産が増加しています)。

他商品との比較(似ているETF/投信との比較表)

ファンド名 投資対象 信託報酬(年率) 為替ヘッジ リバランス 特徴
SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型) 米国株式50%
米国債券50%
0.0938%程度 なし 自動(50:50維持) 米国特化型の低コストバランスファンド
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 国内外の株式・債券・REITなど8資産均等 0.143%程度 なし 自動(8資産均等) 全世界分散、より幅広い資産クラスに投資
楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型) 国内外の株式・債券(株式70%) 0.212%程度 なし 自動(株式70:債券30) 株式比率が高め、全世界分散
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型) 国内外の株式・債券4資産均等 0.154%程度 なし 自動(4資産均等) 全世界分散、株式50%・債券50%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 米国株式100% 0.09372%程度 なし 不要(株式100%) 米国株式のみ、債券なし、高リターン・高リスク
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 全世界の株式(米国約60%) 0.05775%程度 なし 不要(株式100%) 全世界分散、最も人気のあるインデックスファンド

比較のポイント

  • 米国特化vs全世界分散:SBI・iシェアーズ・米国バランスは米国のみ。全世界分散を求めるならeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)やニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)が選択肢
  • 株式比率:50:50のバランスを求めるなら本ファンドやニッセイ(4資産)。より積極的ならeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)や楽天・バランス(株式重視型)
  • コスト:SBI・iシェアーズ・米国バランスは0.0938%とバランスファンドの中で最低水準。ただし株式100%ファンド(eMAXIS Slim オールカントリー:0.05775%)と比較するとやや高い

初心者向けの注意点(誤解されやすいポイントを補足)

1. 「バランスファンド=安全」ではない

債券を組み込んでいるため株式100%より安定していますが、元本保証ではありません。株式と債券が同時に下落する局面では、ファンド全体も大きく下落する可能性があります。特に2022年のように金利急上昇と株価下落が同時に起こると、バランスファンドでも二桁のマイナスリターンになることがあります。

2. 「米国株式50%」は米国市場全体への投資

このファンドの株式部分は、S&P 500指数などの米国株式市場全体に連動します。個別株に投資するわけではないため、特定企業の倒産リスクは限定的ですが、米国市場全体が下落すればファンドも下落します。

3. 為替は「リスク」でもあり「リターン源」でもある

円高になると損失が出やすい一方、円安になれば為替差益が得られます。過去20年で見ると、円は長期的に円安傾向にありました(2012年:約80円/ドル → 2024年:約150円/ドル)。為替リスクは一方的なマイナスではなく、分散投資の一環として捉えることが重要です。

4. 株式100%ファンドとの使い分けが重要

このファンドは「安定性重視でリスクを抑えたい人」向けです。若年層で長期運用が可能なら、株式100%ファンド(eMAXIS Slim 米国株式やオールカントリー)の方が高リターンを期待できる可能性があります。逆に、退職後の資産運用や、リスク許容度が低い方には本ファンドが適しています

5. 分配金は原則再投資される

このファンドは分配金を出さずに再投資する方針です(分配金再投資型)。そのため、定期的な現金収入は得られません。インカムゲイン(配当収入)を求める場合は、高配当株ファンドや債券ファンドの併用を検討する必要があります。

ポートフォリオ例(用途の例であり推奨ではない)

以下は、SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)を活用したポートフォリオの一例です。あくまで参考例であり、投資推奨ではありません。ご自身のリスク許容度や投資目的に応じて調整してください。

パターン1:米国特化型ポートフォリオ(シンプル運用)

  • SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型):100%

向いている人:投資初心者、米国市場に集中投資したい方、リバランスの手間をかけたくない方
特徴:1本で米国の株式と債券に分散投資できる最もシンプルな方法。NISAの成長投資枠をこれ1本で埋めることも可能。

パターン2:全世界分散とのハイブリッド型

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):50%
  • SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型):50%

向いている人:全世界分散もしたいが、米国にも重点を置きたい方
特徴:全体では株式75%・債券25%程度の配分になり、株式比率がやや高めのバランス運用が実現できます。

パターン3:リスク抑制重視型(退職後・保守的運用)

  • SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型):70%
  • eMAXIS Slim 国内債券インデックス:30%

向いている人:退職後の資産運用、リスク許容度が低い方、安定性を最重視する方
特徴:全体では株式35%・債券65%程度になり、非常に保守的な運用が可能。為替リスクも国内債券の組み入れで一部緩和されます。

パターン4:成長重視型(若年層・積極運用)

  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):70%
  • SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型):30%

向いている人:20〜30代の若年層、長期運用が可能な方、高リターンを狙いたい方
特徴:全体では株式85%・債券15%程度となり、株式中心ながらも一部債券でリスクヘッジが効いた運用になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. このファンドは初心者に向いていますか?

A. はい、初心者にも向いています。株式と債券の配分を自動で調整してくれるため、投資の知識が少なくても分散投資が実現できます。また、信託報酬が低く、長期投資に適した設計です。ただし、米国市場に集中投資する点と為替リスクがある点は理解しておく必要があります。

Q2. つみたてNISA対象ですか?

A. いいえ、つみたてNISA対象ではありません。ただし、新NISA(2024年開始)の成長投資枠では購入可能です。成長投資枠では年間240万円まで非課税で投資できます。

Q3. eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)とどちらが良いですか?

A. 米国市場に特化したいならSBI・iシェアーズ・米国バランス、全世界分散を求めるならeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)が適しています。コストはSBI・iシェアーズ(0.0938%)の方がやや低いですが、eMAXIS Slim(8資産)は国内外の株式・債券・REITなど8資産に分散するため、地域リスクが分散されます。

Q4. 分配金は出ますか?

A. このファンドは原則として分配金を出さず、自動的に再投資されます。分配金を受け取りたい場合は、高配当株ファンド(楽天VYMなど)や債券ファンドを検討してください。

Q5. リバランスはいつ行われますか?

A. リバランスのタイミングは運用会社が判断し、定期的に株式50%・債券50%の配分に戻す調整が行われます。投資家が手続きを行う必要はありません。

Q6. 為替ヘッジがないことのデメリットは?

A. 為替ヘッジがないと、円高局面では円ベースのリターンが目減りします。ただし、長期的には円安傾向が続いてきた歴史もあり、為替リスクは一概にマイナスとは言えません。また、為替ヘッジにはコストがかかるため、ヘッジなしの方が信託報酬を抑えられるメリットもあります。

まとめ(箇条書き)

  • SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)は、米国株式と米国債券を50:50で保有するバランスファンド
  • 信託報酬0.0938%程度と、バランスファンドの中で業界最低水準の低コスト
  • 自動リバランス機能により、株式50%・債券50%の配分が常に維持される
  • 株式100%ファンドより値動きが穏やかで、初心者やリスク許容度の低い方に適している
  • 為替ヘッジなしのため、円高・円安の影響を直接受ける
  • 米国市場のみへの投資のため、地域分散は限定的(全世界分散ではない)
  • 新NISAの成長投資枠対象で、税制優遇を受けながら長期運用が可能
  • 運用歴は約3年と比較的浅いが、純資産総額は安定的に増加している
  • 株式100%ファンドと比較すると、長期的な期待リターンはやや低い可能性がある
  • 金利上昇局面では債券部分が下落リスクを抱えるため、株式と債券が同時に下落する可能性もある

免責事項

本記事は投資助言や特定商品の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。投資信託は元本保証ではなく、市場環境により損失が生じる可能性があります。

記載されているデータや情報は2025年4月30日時点のものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。最新の情報は、運用会社の公式サイトや目論見書、月次レポート等でご確認ください。

投資信託の購入にあたっては、必ず投資信託説明書(交付目論見書)をよくお読みいただき、ご自身の投資目的やリスク許容度に合致するかをご判断ください。

カマタ

カマタ

はじめまして、カマタです。
これまで学んできた投資の知識を少しでも誰かの役に立てられればと思い、このブログを始めました。
無理なく続けながら、分かりやすい情報を発信していきます。

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