この商品の結論:どんな人に向いている?
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは、インド・中国・ブラジルなどの新興国市場に広く分散投資したい方に向いています。先進国株式だけではカバーできない成長性を取り込みたい中級者向けのファンドです。ただし、価格変動が大きく、カントリーリスクもあるため、単独での投資は推奨しません。全世界株式や先進国株式と組み合わせて、ポートフォリオの一部(10〜20%程度)として保有するのが現実的な使い方です。低コストで新興国に投資できる貴重な選択肢ですが、初心者がメインで持つにはリスクが高い点に注意してください。
商品の概要
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託です。新興国の株式市場全体に連動することを目指しており、MSCIエマージング・マーケット・インデックスをベンチマーク(目標とする指標)としています。
「新興国」とは、経済成長が著しい発展途上国のことで、具体的には中国、インド、台湾、韓国、ブラジル、南アフリカなどが含まれます。これらの国々は先進国よりも高い成長率が期待される一方、政治・経済の不安定さも抱えています。
このファンドはeMAXIS Slimシリーズの一つで、業界最低水準の運用コストを目指す方針を掲げています。
仕組み
ベンチマーク
MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)
これは新興国24カ国・約1,400銘柄で構成される株式指数です。時価総額の約85%をカバーしており、新興国市場全体の動きを表しています。
投資先の内訳
- 国別構成(上位):中国(約26%)、インド(約18%)、台湾(約16%)、韓国(約12%)、ブラジル(約5%)など
- 業種別構成:情報技術、金融、一般消費財、コミュニケーション・サービスなど多岐にわたる
- 組入銘柄例:台湾セミコンダクター(TSMC)、サムスン電子、テンセント、アリババなど
運用手法
インデックスファンド方式で、ベンチマークに連動するように機械的に株式を購入します。ファンドマネージャーの裁量判断は入りません。
メリット
1. 高い成長ポテンシャル
新興国は人口増加・中間層の拡大・インフラ投資などにより、長期的な経済成長が期待されます。先進国よりも高いリターンを狙える可能性があります。
2. 分散効果
先進国株式とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体のリスク分散に貢献します。米国一辺倒の投資から脱却できます。
3. 業界最低水準の経費率
信託報酬は年0.154%程度(2024年時点)。新興国株式ファンドの中では非常に低コストです。長期投資においてコスト差は大きな影響を与えます。
4. 広範な分散投資
約1,400銘柄に分散投資されているため、特定の国や企業の不振による影響を抑えられます。
5. 積立投資に対応
100円から積立可能で、つみたてNISA対象商品です。少額から新興国株式への投資を始められます。
デメリット
1. 価格変動が非常に大きい
新興国株式は先進国株式よりも値動きが激しく、年間で±30%以上の変動も珍しくありません。短期的には大きな損失を抱える可能性があります。
2. カントリーリスク
政治不安、通貨危機、規制変更などのリスクがあります。中国の規制強化やロシアの地政学リスクなど、予測困難な事態が起こりえます。
3. 為替リスク
新興国通貨は先進国通貨よりも不安定です。円高になると基準価額が下がります。
4. 過去のリターンは必ずしも高くない
「新興国=高リターン」というイメージとは裏腹に、過去10〜20年のリターンは米国株式(S&P500)を下回っています。リスクの割にリターンが見合わないと感じる投資家もいます。
5. 中国への集中度が高い
構成比率の約26%を中国が占めるため、中国経済の停滞や政治リスクの影響を大きく受けます。
他商品との比較
| 商品名 | 投資対象 | 経費率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | 新興国株式 | 0.154% | 新興国24カ国に分散 |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 全世界株式 | 0.05775% | 先進国+新興国(新興国比率は約11%) |
| SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド | インド株式 | 0.4638% | インドのみに集中投資 |
| iFreeNEXT インド株インデックス | インド株式 | 0.473% | インドのみに集中投資 |
全世界株式(オルカン)を選べば新興国株式も含まれますが、比率は約11%と限定的です。もっと新興国の比率を高めたい場合に、このファンドを追加する意義があります。
初心者向けの注意点
1. 単独での全額投資は避ける
新興国株式だけに投資すると、リスクが大きすぎます。全世界株式や先進国株式を中心に据え、補完的に10〜20%程度を組み入れるのが現実的です。
2. 長期保有が前提
短期的には大きく下落することもありますが、10年以上の長期で見れば成長の恩恵を受けられる可能性があります。
3. 感情に流されない
新興国株式は値動きが激しいため、下落局面でパニック売りをしてしまいがちです。事前に「どの程度の下落まで耐えられるか」を考えておきましょう。
4. 情報収集が難しい
新興国企業の情報は日本語で得にくく、ニュースも限られます。個別株投資ではなくインデックスファンドで投資する意義がここにあります。
ポートフォリオ例(用途例として)
例1:全世界株式をベースに新興国比率を高めたい人
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):70%
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス:15%
- 現金・債券:15%
→ 新興国比率を約20%まで引き上げられます。
例2:先進国と新興国を自分で調整したい人
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス:60%
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス:20%
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX):10%
- 現金・債券:10%
→ 地域ごとの比率を自分でコントロールできます。
※これらは用途例であり、購入を推奨するものではありません。ご自身のリスク許容度に応じて判断してください。
まとめ
- 新興国24カ国・約1,400銘柄に低コスト(0.154%)で分散投資できる
- 長期的な成長ポテンシャルがある一方、価格変動が非常に大きい
- カントリーリスク・為替リスクがあり、初心者単独保有には向かない
- 全世界株式や先進国株式と組み合わせて、ポートフォリオの10〜20%程度に留めるのが現実的
- 過去のリターンは米国株式を下回っているため、「新興国=高リターン」という期待は禁物
- 中国への集中度が高く、中国経済の動向に大きく影響される
- 長期保有・積立投資が前提で、短期売買には不向き
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは、ポートフォリオに新興国の成長性を取り込みたい中級者向けの選択肢です。リスクを理解した上で、分散投資の一部として活用しましょう。