結論:確定申告の必要性を正しく理解して、損をしない選択を
確定申告は、すべての人に必要なわけではありません。しかし、会社員であっても確定申告が必要なケースや、申告することで税金が戻ってくるケースが数多く存在します。この記事では、確定申告が必要な人・不要な人を明確にし、会社員でも知っておくべき申告のメリットと具体的な手続き方法をわかりやすく解説します。
医療費控除やふるさと納税、副業収入がある方は、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。また、2025年の確定申告期間は2月17日(月)から3月17日(月)です。この記事を読めば、自分が確定申告をすべきかどうか、そしてどのように進めればよいかが理解でき、安心して行動に移せるようになります。
確定申告とは?基本の仕組みを理解しよう
確定申告の基本概念
確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)の所得と税金を計算し、国に報告する手続きのことです。会社員の方は、通常は会社が年末調整で税金の計算をしてくれるため、確定申告は不要です。しかし、年末調整では対応できない控除や、会社以外の収入がある場合には、個人で確定申告を行う必要があります。
確定申告を行うことで、払いすぎた税金が戻ってきたり(還付)、逆に不足分を追加で納めたり(納税)することになります。
所得税と住民税の基礎知識
確定申告に関わる主な税金は、所得税と住民税の2つです。
- 所得税:国に納める税金で、所得が多いほど税率が高くなる累進課税制度が採用されています(5%〜45%)。確定申告をすると、その年の所得税が確定し、払いすぎていた場合は還付されます。
- 住民税:都道府県や市区町村に納める税金で、前年の所得に基づいて計算されます。確定申告のデータは自動的に住民税の計算にも使われるため、翌年6月から支払う住民税の額が決まります。
この2つの税金は、控除(税金を計算する際に所得から差し引ける金額)を適用することで軽減できます。
確定申告が必要な人:こんな場合は必ず申告を
会社員でも確定申告が必要なケース
会社員の方でも、以下のいずれかに該当する場合は確定申告が義務となります。
- 年収が2,000万円を超える方:会社の年末調整では対応できないため、個人で確定申告が必要です。
- 2カ所以上から給与を受け取っている方:本業以外の給与所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。
- 副業などの所得が年間20万円を超える方:給与所得以外の所得(事業所得、雑所得など)が20万円を超える場合は申告義務があります。
- 会社で年末調整を受けていない方:年の途中で退職し、再就職していない場合などが該当します。
個人事業主・フリーランスの場合
個人事業主やフリーランスの方は、原則として確定申告が必要です。事業所得がある場合、年間の収入から経費を差し引いた所得を計算し、確定申告で報告します。
ただし、所得が基礎控除(48万円)以下で、他に所得がない場合には、確定申告は不要です。
その他の確定申告が必要なケース
- 不動産収入がある方:賃貸収入などがある場合は確定申告が必要です。
- 株式や仮想通貨の売却益がある方:特定口座(源泉徴収あり)以外で取引している場合や、仮想通貨の利益がある場合は申告が必要です。
- 一定額以上の公的年金を受給している方:公的年金等の収入が400万円を超える場合、または年金以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
確定申告をしたほうがよい人:税金が戻ってくる可能性
医療費控除を受けたい方
1年間の医療費が10万円(または所得の5%のいずれか低い方)を超えた場合、医療費控除を受けられます。会社の年末調整では医療費控除は適用できないため、確定申告が必要です。
医療費控除の対象となるのは、病院での治療費、薬代、入院費用などです。家族全員分の医療費を合算できるため、世帯でまとめて申告することで控除額が大きくなる可能性があります。
ふるさと納税をした方
ふるさと納税を行った方は、寄附金控除を受けることで、寄附額から2,000円を差し引いた金額が所得税と住民税から控除されます。
ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告は不要ですが、以下のいずれかに該当する場合は確定申告が必要です。
- 年間6自治体以上にふるさと納税をした
- 医療費控除や住宅ローン控除など、他の理由で確定申告をする
- 給与所得以外の所得が20万円を超える
なお、ワンストップ特例制度を申請していても、確定申告をするとその申請は無効になります。この場合、確定申告でふるさと納税分も必ず申告してください。
住宅ローン控除を初めて受ける方
住宅ローンを組んで住宅を購入・新築した場合、初年度は確定申告が必須です。2年目以降は会社の年末調整で対応できますが、1年目だけは個人で確定申告を行う必要があります。
住宅ローン控除を受けることで、年末のローン残高の0.7%が所得税(および住民税)から控除されます。
年の途中で退職した方
年の途中で退職し、その年中に再就職していない場合、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。退職時には所得税が多めに源泉徴収されていることが多いため、確定申告で正確な税額を計算し直すことで還付を受けられます。
確定申告が不要な人:こんな場合は申告しなくてOK
会社員で年末調整を受けた方(控除が追加でない場合)
会社で年末調整を受けており、医療費控除やふるさと納税などの追加控除がない場合、確定申告は不要です。年末調整で所得税の計算が完了しているためです。
給与所得以外の所得が20万円以下の方
副業などで給与所得以外の所得がある場合でも、その所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。ただし、この場合でも住民税の申告は必要になる場合があるため、自治体に確認することをおすすめします。
公的年金受給者で「確定申告不要制度」の対象者
公的年金等の収入が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下の場合、確定申告不要制度の対象となり、確定申告は不要です。
確定申告のメリット:税金の還付だけじゃない
払いすぎた税金が戻ってくる
確定申告の最大のメリットは、払いすぎた税金が還付されることです。医療費控除、住宅ローン控除、寄附金控除などを適用することで、所得税が減額され、差額が銀行口座に振り込まれます。
還付金は、確定申告期間終了後、おおむね1〜2カ月程度で入金されます。
住民税も軽減される
確定申告で申告した控除は、翌年の住民税の計算にも反映されます。そのため、所得税の還付だけでなく、翌年6月から支払う住民税も軽減される効果があります。
正確な所得証明が得られる
確定申告を行うことで、正確な所得証明書(課税証明書)を取得できます。住宅ローンの審査や保育園の入園手続き、奨学金の申請など、さまざまな場面で所得証明が必要になることがあります。
確定申告のデメリット・注意点:知っておくべきリスク
手続きに時間と手間がかかる
確定申告は、必要書類を集めたり、申告書を作成したりと、一定の時間と労力が必要です。初めての方は特に、どの書類が必要か、どう記入すればよいかわからず、戸惑うこともあるでしょう。
申告ミスによるペナルティのリスク
確定申告の内容に誤りがあった場合、追加で税金を納める必要が生じたり、加算税や延滞税が課されたりする可能性があります。故意ではない誤りであっても、ペナルティが発生することがあるため、正確な申告を心がけましょう。
副業が会社にバレる可能性
確定申告をすると、住民税の額が変わるため、会社に副業が知られる可能性があります。ただし、確定申告書の「住民税の徴収方法」で「自分で納付(普通徴収)」を選択すれば、副業分の住民税を自分で納めることができ、会社に通知されにくくなります。
ただし、すべての自治体が普通徴収に対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。
制度は変更される可能性がある
税制は法改正により変更される可能性があります。控除額や適用要件が変わることもあるため、毎年最新の情報を確認することが大切です。
確定申告の具体的なシミュレーション:数字で理解する
ケース1:医療費控除を受ける場合
【前提条件】
- 年収:500万円
- 所得税率:10%
- 医療費:年間30万円
【計算】
- 医療費控除額:30万円 − 10万円 = 20万円
- 所得税の還付額:20万円 × 10% = 2万円
- 住民税の軽減額:20万円 × 10% = 2万円
合計で約4万円の税負担が軽減されます。
ケース2:ふるさと納税を3万円した場合
【前提条件】
- 年収:500万円
- 所得税率:10%
- ふるさと納税額:3万円
【計算】
- 自己負担額:2,000円
- 控除額:3万円 − 2,000円 = 28,000円
- 所得税からの還付:約2,800円
- 住民税からの控除:約25,200円
実質2,000円の負担で、3万円分の返礼品を受け取れます。
ケース3:副業収入が25万円ある場合
【前提条件】
- 本業の年収:400万円
- 副業収入(雑所得):25万円
- 副業の経費:5万円
【計算】
- 副業の所得:25万円 − 5万円 = 20万円
- 20万円を超えているため、確定申告が必要
- 追加の所得税:約2万円(所得税率10%の場合)
確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
今日からできるアクションプラン:難易度順に実行しよう
1. 自分が確定申告の対象かチェックする(難易度:低)
まずは、この記事の内容をもとに、自分が確定申告が必要か、またはしたほうが得かを確認しましょう。源泉徴収票や給与明細、医療費の領収書などを手元に集めておくと、判断がしやすくなります。
2. 必要書類を準備する(難易度:低)
確定申告に必要な書類を集めましょう。主なものは以下の通りです。
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- 医療費の領収書・明細書
- ふるさと納税の寄附金受領証明書
- 住宅ローンの年末残高証明書(住宅ローン控除の場合)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 還付金を受け取る銀行口座情報
3. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用する(難易度:中)
国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の指示に従って入力するだけで確定申告書を作成できます。e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からオンラインで申告を完了できます。
マイナンバーカードとICカードリーダー(またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォン)があれば、より簡単に手続きができます。
4. 税務署や確定申告会場で相談する(難易度:中)
初めての確定申告で不安な方は、税務署や確定申告会場で相談することをおすすめします。確定申告期間中は、各地で申告相談会が開催されており、税務署職員や税理士が無料でサポートしてくれます。
ただし、2月中旬から3月中旬の確定申告期間は混雑するため、早めに訪問するか、事前予約をしておくとスムーズです。
5. 会計ソフトや確定申告アプリを使う(難易度:中〜高)
副業や個人事業をしている方は、会計ソフトや確定申告アプリを使うと、日々の収支管理から確定申告書の作成まで効率的に行えます。代表的なサービスには、freee、マネーフォワード クラウド確定申告、弥生の青色申告オンラインなどがあります。
多くのサービスが無料プランや無料体験期間を提供しているため、まずは試してみることをおすすめします。
よくある誤解と注意点:確定申告で失敗しないために
誤解1:「会社員は確定申告が不要」
多くの会社員の方は年末調整で税金の手続きが完了しますが、医療費控除やふるさと納税、副業収入がある場合は確定申告が必要、またはしたほうが得です。「会社員だから関係ない」と思い込まず、自分の状況を確認しましょう。
誤解2:「ふるさと納税はワンストップ特例制度で十分」
ワンストップ特例制度は便利ですが、6自治体以上に寄附した場合や、医療費控除などで確定申告をする場合は使えません。この場合、確定申告でふるさと納税分も申告する必要があります。
誤解3:「副業が20万円以下なら何もしなくていい」
副業の所得が20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要な場合があります。自治体によって取り扱いが異なるため、市区町村の窓口に確認しましょう。
注意点:申告期限を守る
確定申告の期限は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(2025年は2月17日〜3月17日)。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、余裕を持って手続きを進めましょう。
還付申告(税金が戻ってくる申告)の場合は、翌年1月1日から5年間いつでも申告できますが、早めに申告したほうが還付金も早く受け取れます。
まとめ:確定申告を味方につけて、賢く節税しよう
- 確定申告が必要な人:年収2,000万円超、2カ所以上からの給与、副業所得20万円超、個人事業主など
- 確定申告をしたほうがよい人:医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除(初年度)、年の途中で退職した方など
- 確定申告のメリット:税金の還付、住民税の軽減、正確な所得証明の取得
- 注意点:手続きの手間、申告ミスのリスク、副業が会社にバレる可能性、制度変更の可能性
- 具体的なアクション:対象か確認→必要書類を準備→国税庁のサイトや会計ソフトを活用→税務署で相談
- よくある誤解:会社員でも確定申告が必要なケースがある、ワンストップ特例制度には条件がある、副業20万円以下でも住民税申告が必要な場合がある
確定申告は、一見複雑に感じるかもしれませんが、一度流れを理解すれば、毎年スムーズに対応できるようになります。自分に該当する控除を見逃さず、正しく申告することで、税負担を軽減し、家計の改善につながります。
制度は変更される可能性があるため、毎年最新の情報を確認し、不明点があれば税務署や税理士に相談することをおすすめします。できるところから一歩ずつ、一緒に進めていきましょう。