住民税の仕組みと節税のポイント|所得税との違いを知って賢く控除を活用する方法

住民税の仕組みと所得税との違いを理解して賢く節税する方法

結論:住民税の仕組みを理解すれば、翌年の税負担を賢く減らせる

住民税は、毎月給与から天引きされているため「払っている実感」が薄い税金です。しかし、所得税と同じように各種控除を活用することで、翌年の税負担を軽減することができます。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、年末調整や確定申告で控除をしっかり申告すれば、翌年6月からの手取りが増える仕組みです。

この記事では、住民税の基本的な仕組み、所得税との違い、そして初心者でも活用できる節税のポイントを分かりやすく解説します。「節税」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実は年末調整や確定申告で適切に控除を申告するだけで、誰でも実践できる方法です。

住民税の仕組みを正しく理解することで、家計管理の精度が上がり、将来的な資金計画もより明確になります。まずは基本から一緒に確認していきましょう。

住民税とは?基本的な仕組みを理解しよう

住民税は地域の行政サービスを支える地方税

住民税とは、住んでいる都道府県や市区町村に納める地方税のことです。教育、福祉、防災、道路整備など、私たちが日常的に利用している地域の行政サービスを支えるために使われています。

会社員の場合、毎月の給与から天引き(特別徴収)される形で納税しているため、「自分で納めている」という実感が薄いかもしれません。一方、個人事業主やフリーランスの方は、年4回(6月・8月・10月・1月)に分けて自分で納付(普通徴収)することになります。

住民税の計算期間と納税時期

住民税の大きな特徴は、前年の所得をもとに翌年に課税されるという点です。具体的には以下のようになります。

  • 2024年1月1日~12月31日の所得 → 2025年6月~2026年5月に住民税として課税
  • 2025年1月1日~12月31日の所得 → 2026年6月~2027年5月に住民税として課税

つまり、今年の収入や控除の申告内容が、来年の住民税額に直接影響するということです。このタイムラグを理解しておくことが、家計管理において非常に重要です。

住民税は「所得割」と「均等割」の2つで構成される

住民税は以下の2つの要素から成り立っています。

所得割:前年の所得に応じて課税される部分です。所得が多いほど税額も増えます。税率は基本的に一律10%(都道府県民税4% + 市区町村民税6%)です。

均等割:所得に関係なく、一定の所得がある人全員に課される定額の税金です。金額は自治体によって異なりますが、年間5,000円~6,000円程度が一般的です(都道府県民税と市区町村民税の合計)。

この2つを合計した金額が、年間の住民税として徴収されます。

住民税と所得税の違い|知っておくべき5つのポイント

住民税と所得税は、どちらも所得に対して課税される税金ですが、仕組みや計算方法には重要な違いがあります。この違いを理解することで、節税戦略をより効果的に立てることができます。

1. 課税のタイミングが異なる

所得税:その年の所得に対して、その年に課税されます。会社員の場合、毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で精算されます。

住民税:前年の所得に対して、翌年に課税されます。会社員の場合、6月から翌年5月まで、毎月の給与から天引きされます。

このため、退職した翌年も住民税の納税義務が発生するケースがあり、注意が必要です。

2. 税率の仕組みが異なる

所得税:累進課税制度を採用しており、所得が増えるほど税率も上がります(5%~45%の7段階)。

住民税:所得割の税率は一律10%です(都道府県民税4% + 市区町村民税6%)。所得の多寡に関わらず、税率は変わりません。

3. 控除額が異なる

所得税と住民税では、同じ控除でも金額が異なる場合があります。

控除の種類 所得税 住民税
基礎控除(2025年分) 58万円 43万円
配偶者控除 38万円 33万円
扶養控除(一般) 38万円 33万円
生命保険料控除(上限) 12万円 7万円

このように、住民税の控除額は所得税よりも少ないため、同じ所得・控除内容でも、住民税の方が課税所得が大きくなります。

4. 還付金の有無が異なる

所得税:年末調整や確定申告によって、払いすぎた税金が還付金として戻ってくることがあります。

住民税:基本的に還付金はありません。控除を申告すると、翌年6月からの税額が減額される形で反映されます。

そのため、住民税の節税効果は「実感しにくい」という特徴があります。しかし、年間で見れば確実に税負担が軽減されています。

5. 非課税ラインが異なる

所得税と住民税では、課税されない所得の基準(非課税ライン)が異なります。

所得税(2025年分以降):給与収入123万円以下(給与所得控除65万円 + 基礎控除58万円)

住民税(2025年度):給与収入100万円以下(自治体によって若干異なる場合あり)

住民税(2026年度以降):給与収入110万円以下に引き上げられる予定です。

このため、「所得税は非課税だが、住民税は課税される」というケースも存在します。アルバイトやパートで働く方は、この違いを理解しておくことが重要です。

住民税のメリット・デメリット

メリット:地域社会を支える重要な財源

住民税は、私たちが暮らす地域の行政サービスを支える大切な財源です。以下のようなメリットがあります。

  • 地域のインフラ整備:道路、公園、図書館などの公共施設の維持・整備に使われます
  • 教育の充実:公立学校の運営、教育環境の整備に活用されます
  • 福祉サービス:高齢者福祉、子育て支援、医療費助成などに使われます
  • 防災・安全:消防、防災対策、治安維持に役立てられます

また、税率が一律10%であるため、計算がシンプルで分かりやすいという点もメリットです。

デメリット:前年の所得に基づくため、収入が減った年の負担が重い

住民税には以下のようなデメリットもあります。

  • タイムラグがある:前年の所得に対して翌年課税されるため、退職や収入減少があった年の翌年も、前年の高い収入に基づいた住民税を納める必要があります
  • 還付金がない:所得税のように年末調整で還付金が戻ってくることがないため、節税効果を実感しにくいです
  • 控除額が所得税より少ない:同じ控除でも、住民税の方が控除額が小さいため、税負担が相対的に大きくなります
  • 自治体によって金額が異なる:均等割の金額や、一部の控除要件が自治体によって異なるため、引っ越しした際に注意が必要です

特に、退職や転職、フリーランスになった年の翌年は、収入が減っているにもかかわらず高額な住民税の納付書が届くことがあり、家計を圧迫する原因となります。この点は事前に理解し、準備しておくことが大切です。

住民税の注意点・よくある誤解

注意点1:退職・転職した翌年の住民税に要注意

会社員として働いている間は、住民税は毎月の給与から天引きされるため、あまり意識することがありません。しかし、退職や転職をすると、納税方法が変わることがあります。

退職時の住民税の扱い:退職時期によって、残りの住民税をどう納めるかが変わります。

  • 1月~5月に退職:残りの住民税を最後の給与や退職金から一括徴収されることが一般的
  • 6月~12月に退職:残りの住民税を自分で納付(普通徴収)するか、一括徴収してもらうか選択できる場合があります

また、退職した翌年も、前年の所得に基づいた住民税の納付書が届きます。収入がない、または減っている状態で高額な納税が求められることもあるため、退職を考えている方は事前に貯蓄を準備しておくと安心です。

注意点2:ふるさと納税は住民税から控除される

ふるさと納税は、寄付金額から2,000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される仕組みです。このうち、大部分は住民税から控除されます。

ふるさと納税の控除内訳は、おおむね以下の通りです。

  • 所得税からの控除:(寄付金額 – 2,000円)× 所得税率
  • 住民税からの控除(基本分):(寄付金額 – 2,000円)× 10%
  • 住民税からの控除(特例分):(寄付金額 – 2,000円)× (100% – 10% – 所得税率)

つまり、ふるさと納税をすることで、翌年の住民税が大きく減額される仕組みです。ただし、控除には上限額があり、年収や家族構成によって異なります。上限を超えた寄付は自己負担となるため、事前にシミュレーションすることをおすすめします。

注意点3:iDeCoの掛金も住民税の控除対象

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税だけでなく住民税も軽減されます。

例えば、年間24万円(月2万円)をiDeCoに拠出した場合、住民税の所得割(10%)が24万円 × 10% = 2万4,000円軽減されます(所得税も別途軽減)。

iDeCoは老後資金の準備と節税を同時に実現できる制度ですが、60歳まで引き出せないという制約があります。無理のない金額で始めることが大切です。

よくある誤解1:「住民税は節税できない」

「住民税は一律10%だから節税できない」と思われがちですが、これは誤解です。所得控除を増やすことで課税所得を減らせば、住民税も確実に軽減されます。

例えば、生命保険料控除、医療費控除、ふるさと納税、iDeCoなどを活用すれば、翌年の住民税を減らすことができます。ただし、還付金として戻ってくるのではなく、「翌年の税額が減る」形で反映されるため、効果を実感しにくいという特徴があります。

よくある誤解2:「年末調整で全て完了する」

会社員の場合、年末調整で所得税の精算が行われますが、医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を使わない場合)、雑損控除などは年末調整では処理できません。これらの控除を受けるには、確定申告が必要です。

確定申告をすることで、所得税だけでなく住民税も自動的に軽減されます。「会社員だから確定申告は不要」と思わず、控除漏れがないかチェックすることが大切です。

制度は将来変更される可能性がある

税制は毎年改正が行われており、控除額や非課税ラインなどが変更されることがあります。2025年度の税制改正では、所得税の基礎控除が引き上げられましたが、住民税の基礎控除は据え置きとなっています。また、2026年度からは住民税の非課税ラインが給与収入110万円に引き上げられる予定です。

このように、税制は社会情勢や政策によって変わる可能性があるため、最新の情報を定期的に確認することが重要です。

具体例:年収別の住民税シミュレーション

ここでは、具体的な数字を使って、年収別の住民税額をシミュレーションしてみましょう。控除の有無によって、税額がどれくらい変わるかを確認できます。

ケース1:独身・年収300万円の会社員(控除なし)

  • 年収:300万円
  • 給与所得控除:98万円(年収300万円の場合)
  • 基礎控除:43万円(住民税)
  • 課税所得:300万円 – 98万円 – 43万円 = 159万円
  • 所得割:159万円 × 10% = 15万9,000円
  • 均等割:5,000円(自治体により異なる)
  • 年間住民税:約16万4,000円

ケース2:独身・年収300万円の会社員(iDeCo月2万円、生命保険料控除あり)

  • 年収:300万円
  • 給与所得控除:98万円
  • 基礎控除:43万円
  • iDeCo掛金控除:24万円(年間)
  • 生命保険料控除:7万円(住民税の上限)
  • 課税所得:300万円 – 98万円 – 43万円 – 24万円 – 7万円 = 128万円
  • 所得割:128万円 × 10% = 12万8,000円
  • 均等割:5,000円
  • 年間住民税:約13万3,000円

節税効果:16万4,000円 – 13万3,000円 = 年間3万1,000円の軽減

ケース3:既婚・年収500万円の会社員(配偶者控除あり)

  • 年収:500万円
  • 給与所得控除:144万円(年収500万円の場合)
  • 基礎控除:43万円
  • 配偶者控除:33万円
  • 課税所得:500万円 – 144万円 – 43万円 – 33万円 = 280万円
  • 所得割:280万円 × 10% = 28万円
  • 均等割:5,000円
  • 年間住民税:約28万5,000円

ケース4:既婚・年収500万円の会社員(配偶者控除、iDeCo月2万円、ふるさと納税6万円)

  • 年収:500万円
  • 給与所得控除:144万円
  • 基礎控除:43万円
  • 配偶者控除:33万円
  • iDeCo掛金控除:24万円
  • 課税所得:500万円 – 144万円 – 43万円 – 33万円 – 24万円 = 256万円
  • 所得割(ふるさと納税前):256万円 × 10% = 25万6,000円
  • ふるさと納税による住民税控除:約5万8,000円(6万円 – 2,000円)
  • 所得割(ふるさと納税後):25万6,000円 – 5万8,000円 = 19万8,000円
  • 均等割:5,000円
  • 年間住民税:約20万3,000円

節税効果:28万5,000円 – 20万3,000円 = 年間8万2,000円の軽減

シミュレーションから分かること

これらのシミュレーションから、以下のことが分かります。

  • iDeCoや生命保険料控除を活用することで、年間数万円の住民税を軽減できる
  • ふるさと納税を組み合わせることで、さらに大きな節税効果が得られる
  • 控除は「使わなければ損」であり、積極的に活用すべき
  • 同じ年収でも、家族構成や控除の有無で税額は大きく変わる

ただし、これらはあくまで概算です。実際の住民税額は自治体や個別の状況によって異なりますので、詳細は住んでいる自治体の税務課や税理士に確認することをおすすめします。

今日からできるアクションプラン

住民税の仕組みを理解したら、次は実際に行動に移しましょう。以下のアクションプランは、難易度が低い順に並べています。できるところから一つずつ取り組んでみてください。

1. 給与明細で住民税の金額を確認する

まずは、毎月の給与明細を見て、住民税がいくら天引きされているかを確認しましょう。年間でいくら払っているかを把握することが、家計管理の第一歩です。

給与明細には「住民税」または「市県民税」という項目があります。この金額を12倍(年間)すると、年間の住民税額が分かります。

2. 年末調整で控除の申告漏れをチェックする

年末調整の書類を提出する際、以下の控除を忘れずに申告しましょう。

  • 生命保険料控除:生命保険、個人年金保険、介護医療保険の保険料
  • 地震保険料控除:地震保険の保険料
  • iDeCo(小規模企業共済等掛金控除):iDeCoの掛金
  • 配偶者控除・扶養控除:家族の状況に応じて

これらの控除証明書は、保険会社やiDeCoの運営機関から郵送されてきます。書類が届いたら、大切に保管しておきましょう。

3. ふるさと納税を始める

ふるさと納税は、実質2,000円の負担で地域の特産品などがもらえる、お得な制度です。寄付金額から2,000円を引いた金額が、翌年の住民税(と所得税の一部)から控除されます。

初心者の方は、まず少額(1万円程度)から始めてみることをおすすめします。ふるさと納税サイト(楽天ふるさと納税、さとふる、ふるなびなど)で、控除上限額のシミュレーションができます。

ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告なしで控除が受けられるため、会社員の方でも手軽に始められます(寄付先が5自治体以内の場合)。

4. 医療費が年間10万円を超えたら確定申告を検討する

1年間の医療費が10万円を超えた場合(または総所得金額の5%を超えた場合)、医療費控除を受けることができます。医療費控除は年末調整では処理できないため、確定申告が必要です。

確定申告をすることで、所得税の還付金が戻ってくるだけでなく、翌年の住民税も軽減されます。医療費のレシートや領収書は、念のため保管しておきましょう。

5. iDeCoを検討する(余裕があれば)

iDeCoは、老後資金を準備しながら税制優遇を受けられる制度です。掛金が全額所得控除になるため、所得税・住民税の両方が軽減されます。

ただし、60歳まで引き出せないという制約があるため、無理のない金額で始めることが大切です。まずは月5,000円など、少額から始めてみるのも良いでしょう。

会社員の場合、勤務先が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入していると、iDeCoに加入できない、または掛金上限が制限される場合があります。まずは勤務先の制度を確認してから検討しましょう。

まとめ

住民税の仕組みと節税のポイントについて、重要なポイントをまとめます。

  • 住民税は前年の所得に対して翌年課税されるため、退職・転職時は翌年の納税に備えて貯蓄が必要
  • 所得税と住民税では控除額や税率が異なることを理解し、それぞれの仕組みを把握する
  • 住民税は一律10%だが、所得控除を増やすことで課税所得を減らせるため、節税は可能
  • 年末調整で控除漏れをなくすことが、最も簡単で確実な節税方法
  • ふるさと納税は住民税から大部分が控除されるため、積極的に活用したい制度
  • iDeCoは所得税・住民税の両方を軽減できるが、60歳まで引き出せない点に注意
  • 医療費控除は確定申告が必要だが、還付金と翌年の住民税軽減の両方のメリットがある
  • 税制は将来変更される可能性があるため、最新情報を定期的にチェックすることが大切

住民税は「節税効果を実感しにくい」という特徴がありますが、控除をしっかり活用することで、確実に税負担を軽減できます。まずは給与明細で住民税額を確認し、年末調整で控除漏れをなくすことから始めてみましょう。

一つずつ無理なく取り組むことで、家計の改善につながります。できるところから一緒に進めていきましょう。

カマタ

カマタ

はじめまして、カマタです。
これまで学んできた投資の知識を少しでも誰かの役に立てられればと思い、このブログを始めました。
無理なく続けながら、分かりやすい情報を発信していきます。

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