年末が近づいてくると、なんとなく落ち着かない気持ちになります。今年も残りわずか、と感じるからでしょうか。
私は毎年この時期になると、投資の記録を見返すようにしています。特別なことをするわけではありません。ただ、今年の初めと比べて、資産がどう変化したのかを確認するだけです。
最初の頃は「確認したところで何か変わるのか」と思っていました。でも、続けていくうちに、この小さな習慣が持つ意味に気づかされたのです。
ある年末の夜、ノートを開いた時のこと
数年前の12月、いつものようにノートとパソコンの前に座りました。投資を始めた頃から書き留めている記録です。手書きの数字、印刷した資産状況、ポートフォリオの内訳。
その年は、春先に株価が大きく下がりました。ニュースでも連日のように報道され、周りでも不安の声が聞こえていました。正直、私も動揺しました。毎日のように価格を見ては、ため息をついていた記憶があります。
でも、年末の記録を見返してみると、意外なことに気づきました。
確かに春先は下がっていました。でも、その後少しずつ回復し、年末時点では年初とほぼ同じ水準に戻っていたのです。あの時、慌てて売らなくて良かった。そして何より、「一時の変動だけを見ていては、全体が見えない」という当たり前のことを、身をもって理解できました。
定点観測が教えてくれること
投資には、日々の値動きを追うことも大切かもしれません。でも、それ以上に大切なのは、定期的に立ち止まって、全体を見渡すことだと思うのです。
定点観測というと大げさに聞こえますが、要するに「同じタイミングで、同じ視点で確認する」ということです。私の場合は年末年始。この時期に必ず記録をつけ、1年間の変化を振り返ります。
この習慣から、いくつかのことが見えてきました。
- 短期的な変動に惑わされなくなる:日々の上下に一喜一憂していた自分が、冷静になれるようになりました
- 自分の投資スタイルが定まってくる:何度も記録を見返すうちに、「自分はこういう投資が向いている」という感覚がつかめてきました
- 小さな変化に気づける:資産配分が少しずつ偏っていることや、見直すべきポイントが見えてきます
毎日見ていると、変化が大きすぎて混乱します。でも、1年という単位で見ると、意外と落ち着いて判断できるのです。
投資は「育てるもの」だと気づいた
記録をつけ始めてから、投資に対する考え方が少し変わりました。
以前は、投資を「増やすもの」だと思っていました。お金を投入して、利益を得る。そういう単純な図式で考えていたのです。
でも、定期的に振り返る習慣を持つようになってから、投資は「育てるもの」だと感じるようになりました。植物に水をやり、時々様子を見て、必要なら手を加える。そんな感覚に近いのです。
年末の確認は、いわば「成長の記録」です。去年よりどれくらい育ったか、どの部分が伸びて、どの部分が停滞しているか。そういったことを、焦らずゆっくり確認する時間なのです。
ポートフォリオを見直すとき、私はこう考えるようにしています。
「今年、この資産はどう育ったか?来年はどう育ってほしいか?」
この問いかけが、焦りを和らげ、長期的な視点を思い出させてくれます。
初心者の方へ ー 記録は未来の自分への贈り物
もし、これから投資を始めようと思っている方がいらっしゃるなら、ぜひ記録をつけることをお勧めします。
難しいことは必要ありません。年末年始、あるいは誕生日でも構いません。年に一度、同じタイミングで資産の状況を書き留めておくだけで十分です。
最初の年は比較対象がないので、あまり意味を感じないかもしれません。でも、2年目、3年目と続けていくうちに、その記録が宝物になります。
「あの時、こんなに不安だったのに、今は落ち着いているな」
「あの判断は正しかったんだ」
「ここで焦って売らなくて良かった」
そんな気づきが、記録の中に詰まっているのです。それは、未来の自分への贈り物だと思っています。
まとめ ー 定点観測は、心を整える時間
年末年始の資産チェックは、私にとって特別な時間になりました。数字を確認するだけでなく、この1年の投資と向き合い、来年への気持ちを整える大切な時間です。
投資は、毎日追いかけるものではなく、ゆっくり育てていくもの。定点観測という小さな習慣が、そのことを教えてくれました。
焦らず、慌てず、自分のペースで。今年も、そして来年も、一緒に少しずつ前に進んでいきましょう。
記録をつけることで見えてくる景色が、きっとあなたの投資をより豊かなものにしてくれるはずです。