静かな夜、赤い数字と向き合う
その日の夜、私はパソコンの前で動けなくなっていました。画面には、私が数ヶ月前に購入した投資信託の評価額が表示されています。購入時より15%ほど下がった、赤い数字。
「もう少し待てば戻るはずだ」
そう自分に言い聞かせながら、私はただ画面を見つめるだけでした。でも心の奥では分かっていたんです。このまま持ち続けても、状況は好転しないかもしれない、と。
「もったいない」という気持ちが判断を狂わせる
なぜ私は損切りできなかったのか。後から振り返ると、理由は明白でした。
- 損を確定させたくないという心理
- 「ここまで待ったのに」というサンクコストへの執着
- 「明日には回復するかも」という根拠のない期待
投資の本を読めば、「損切りは大切」と書いてあります。頭では分かっていても、いざ自分のお金が減っていくのを目の当たりにすると、体が動かないんですね。
結局、私はさらに2ヶ月その投資信託を保有し続けました。含み損は20%を超え、ようやく決断したときには、当初の15%損で売っていれば守れたお金も失っていました。
投資における「執着を手放す」ということ
この経験から、私は大切なことを学びました。それは、投資とは「執着を手放す練習」でもあるということです。
私たちは、自分が選んだ投資先に愛着を持ちます。それは決して悪いことではありません。でも、その愛着が判断を曇らせてしまうと、傷は深くなるばかりです。
損切りとは、「負けを認める」ことではありません。「今の状況を冷静に見て、次に進むための決断」なんです。
医者が患者を診るように、投資家も自分のポートフォリオを客観的に見る必要があります。感情を挟まず、事実だけを見る。それができるようになると、損切りも「資産を守るための行動」として捉えられるようになります。
あなたへのやさしいアドバイス
もしあなたが今、含み損を抱えた投資先を前に悩んでいるなら、こう自問してみてください。
「今、この投資先を持っていなかったとして、改めて買いたいと思うだろうか?」
答えがNoなら、それは手放す時期かもしれません。過去の自分の判断に縛られる必要はないんです。
そして、損切りをしても自分を責めないでください。投資は誰もが失敗します。大切なのは、その失敗から何を学ぶかです。
まとめ
あの夜、赤い数字と向き合った私は、今では「執着を手放す大切さ」を学ぶための授業料だったと思えるようになりました。
投資は、お金を増やすだけでなく、自分の心と向き合う時間でもあります。焦らず、執着せず、冷静に。そして、失敗しても自分にやさしく。
一緒に、少しずつ学んでいきましょう。明日はきっと、今日よりも少しだけ賢い投資家になれているはずですから。