冬の午後、パソコンの前でマウスを握りしめていた私の手は、少し震えていました。画面には「購入金額：1,000円」という文字。たった千円なのに、なぜこんなに緊張しているんだろう――そう思いながら、私は人生で初めての投資信託を購入しました。
定年後、投資を始めようと決意してから数ヶ月。本を読み、ネットで調べ、証券口座も開設していました。でも、なかなか最初の一歩が踏み出せなかったんです。「失敗したらどうしよう」「もっと勉強してからにすべきでは」と、言い訳ばかりが頭をよぎっていました。
たった千円が教えてくれた「投資の入口」
ある日、妻に相談すると「千円でできるんでしょ?コーヒー2杯分じゃない」と笑われました。確かに、千円なら喫茶店で使ってしまう金額です。そこで思い切って、とりあえず千円だけ投資信託を買ってみることにしたのです。
購入ボタンを押した瞬間、不思議な感覚がありました。緊張が一気にほぐれて、「ああ、これが投資か」と実感したんです。翌日から毎朝、スマホで残高をチェックするようになりました。千円が997円になったり、1,003円になったり。たった数円の変動なのに、なぜかワクワクしていました。
少額だからこそ学べたこと
千円の投資を始めて1ヶ月ほど経った頃、私はある大切なことに気づきました。それは、投資は「完璧な知識」がなくても始められるということです。
それまでの私は、投資を始める前にすべてを理解しなければいけないと思い込んでいました。でも実際は、少額で始めながら学んでいく方が、はるかに理解が深まったのです。株価が下がった時の気持ち、上がった時の嬉しさ、そして何より「待つ」ことの意味――これらは本を読むだけでは分からなかったことでした。
投資の本質は「完璧さ」ではなく「継続」
最近の調査によると、投資信託は100円から始められるサービスも増えています。少額投資が注目される理由は、リスクを抑えながら投資経験を積めるからです。大きな金額を投資するのは、こうした経験を積んでからでも遅くありません。
私自身、千円から始めたことで「失敗しても大きな損失にはならない」という安心感を持てました。この安心感が、投資を続ける原動力になったんです。今では毎月少しずつ積立額を増やしていますが、あの時の千円がなければ、今の私はいなかったと思います。
心の変化が投資を変える
千円の投資を通して、もう一つ大切なことを学びました。それは、投資は金額の大きさではなく、「始める勇気」と「続ける習慣」が大切だということです。
投資を始める前は、「まとまった資金がないと意味がない」と思っていました。でも実際は、少額でも始めることで投資の流れを体で覚えることができます。市場の動きに一喜一憂しすぎない心の持ち方、長期的な視点で資産を育てる感覚――これらは、少額から始めたからこそ身についたものです。
あなたへのやさしいアドバイス
もし今、投資を始めようか迷っているなら、まずは「千円」から始めてみませんか？コーヒー1杯分、ランチ1回分の金額で、投資の世界に足を踏み入れることができます。
大切なのは金額の大きさではありません。「実際に始めてみる」という一歩です。少額だからこそ、気楽に始められますし、失敗しても勉強代として割り切れます。そして何より、投資を続けることで得られる経験と学びは、どんな本にも書いていない宝物になるはずです。
投資は、完璧な準備ができてから始めるものではありません。始めながら学び、学びながら成長していくものなのです。
まとめ
あの日、震える手で購入した千円の投資信託は、私に「始める勇気」を教えてくれました。投資は特別な人だけのものではなく、誰でも少額から始められるものです。大切なのは、一歩を踏み出す勇気と、それを続ける習慣。その小さな積み重ねが、やがて大きな自信と資産につながっていくのだと、今は実感しています。
焦らず、無理せず、あなたのペースで。一緒に少しずつ、投資という学びの旅を続けていきましょう。
