あれは今から数年前、まだ投資を始めて間もない頃のことでした。朝、いつものようにスマホでニュースを見ていると、「株式市場急落」という見出しが目に飛び込んできました。慌てて証券口座を開くと、保有していた投資信託の評価額が前日から大きく下がっていたのです。
画面を見つめながら、胸がドキドキと高鳴りました。「このまま下がり続けたらどうしよう」「せっかく増えていた資産が消えてしまう」――そんな不安が頭の中をぐるぐると駆け巡り、気づけば売却ボタンを押していました。
市場の波に呑まれた瞬間
売却した直後は、ほっとしたような気持ちになりました。「損失を最小限に抑えられた」と自分に言い聞かせていたのです。でも、その安心感は長くは続きませんでした。
数週間後、市場は落ち着きを取り戻し始めました。そして数ヶ月後、株価は暴落前の水準に戻り、さらにそれを上回っていったのです。もし、あの時売らずに持ち続けていたら――そう思うと、胸が締め付けられるような気持ちになりました。
私が犯した失敗は、短期的な値動きに感情的に反応してしまったことでした。投資を始める時には「長期投資が大切」と頭では理解していたつもりでしたが、いざ暴落に直面すると、その言葉はどこかに消え去ってしまったのです。
暴落は投資の通過儀礼
あの苦い経験から、私はいくつかの大切なことを学びました。
まず、市場の暴落は避けられない現実だということです。過去を振り返れば、リーマンショック、チャイナショック、コロナショックなど、何度も大きな下落が起きています。でも、そのたびに市場は回復し、成長を続けてきました。暴落は決して「終わり」ではなく、投資を続ける上での通過儀礼のようなものなのです。
次に学んだのは、長期的な視点を持つことの重要性です。暴落の最中は、まるで世界が終わるかのように感じられます。でも、10年、20年という長期のチャートで見れば、暴落は単なる「一時的な調整」に過ぎません。大切なのは、その瞬間の恐怖に飲まれず、冷静さを保つことです。
そして最も大きな気づきは、自分のリスク許容度を知ることの大切さでした。あの時慌てて売ってしまったのは、そもそも自分が耐えられないほどのリスクを取っていたからかもしれません。投資に振り向ける金額は、途中で降りずに済む範囲に設定すべきなのです。
読者のみなさんへ ー 暴落を乗り越えるために
もし今、株価の下落に不安を感じている方がいらっしゃったら、一度立ち止まって考えてみてください。
- 投資の目的は何ですか? 老後資金、子どもの教育資金、それとも別の目標でしょうか。
- その目標までの時間はどれくらいありますか? 長期的な目標であれば、今の下落は一時的なものに過ぎません。
- 今の投資額は、本当に自分に合っていますか? 夜も眠れないほど不安なら、それは投資額が多すぎるサインかもしれません。
投資に「絶対」はありません。でも、歴史が教えてくれるのは、市場に留まり続けた人だけが、長期的な成長の恩恵を受けられるということです。
暴落の時こそ、実は「安く買える絶好の機会」でもあります。もちろん、底値を見極めるのは誰にとっても難しいことです。でも、コツコツと積立投資を続けている人は、下落時にも着実に資産を積み上げ、その後の上昇局面で大きなリターンを手にすることができました。
あの日から学んだこと
今でも思い出します。慌てて売却ボタンを押したあの日のことを。あれから私は、暴落を何度か経験しました。でも、もう慌てて売ることはありません。
それは、投資の本質を理解できたからです。投資は、短期的な値動きで一喜一憂するものではなく、長い時間をかけて資産を育てていくものだと気づいたのです。
市場が下がった時、私は今こう考えるようにしています。「これは試練ではなく、学びの機会だ。そして、安く買える貴重なチャンスでもある」と。感情に流されず、自分の投資方針を信じて続けること――それが、暴落を乗り越える唯一の方法だと思います。
みなさんも、市場の波に流されず、ご自身のペースで投資を続けていってください。焦る必要はありません。大切なのは、途中で降りないこと。長期投資の大海原は、時に荒れることもありますが、辛抱強く航海を続ければ、必ず穏やかな港にたどり着けると信じています。
一緒に、ゆっくりと学んでいきましょう。