言葉にできなかった夜
その日は、妻と夕食を食べながら何気なく将来の話になりました。「老後の資金、ちゃんと準備できてるのかな」と妻が不安そうに言ったとき、私は「大丈夫だよ、投資もしてるし」と答えました。
すると妻は少し驚いた顔をして、「投資? どんな目的で始めたの?」と聞いてきました。正直なところ、私は一瞬言葉に詰まってしまいました。
投資を始めて3年ほど経っていましたが、その目的を家族にきちんと話したことがなかったのです。「お金を増やすため」という漠然とした答えしか出てこず、妻はさらに「それで、どれくらい貯めたいの? 何のために?」と続けました。
私は答えられませんでした。自分でも驚きましたが、投資を続けてきたのに、その先にある本当の目的を言葉にしたことがなかったのです。その夜、ベッドに入ってからもずっとその会話が頭から離れませんでした。
目的のない投資は、地図のない旅と同じ
翌日、私は改めて自分の投資目的について考え直しました。そして気づいたのは、投資を始めた当初は「なんとなく将来のため」という曖昧な理由だけで、具体的な目標を設定していなかったということです。
投資の勉強をしていく中で、「ゴールベースアプローチ」という考え方を知りました。これは、「何のために」「いくら必要なのか」という目的を最初に明確にする資産形成の方法です。目的があるからこそ、市場の変動に一喜一憂せず、冷静に投資を続けられるのだと学びました。
考えてみれば当たり前のことです。地図も目的地もなく旅に出る人はいません。投資も同じで、目的がなければどこに向かっているのかわからず、途中で迷ってしまうのです。
私は少しずつ自分の夢を整理していきました。定年後も夫婦で旅行を楽しみたい、子どもが独立した後も趣味を続けたい、そして何より、お金の不安を感じずに穏やかに暮らしたい。そんな当たり前の夢が、私の投資の目的だったのです。
夢を語ることで見えてくるもの
数日後、私は改めて妻と話す時間を作りました。今度はきちんと準備をして、自分の考えをまとめてから臨みました。
「実は、こんな風に考えているんだ」と、私は自分の夢を一つ一つ話しました。定年後に二人でゆっくり旅行したいこと、趣味の読書や写真を続けたいこと、そして何より、お金の心配なく穏やかに暮らしたいということ。
妻は静かに聞いてくれて、そして微笑みながら「私も同じこと考えてた」と言いました。その瞬間、私は夢を言葉にして共有することの大切さを実感しました。
投資は、ただお金を増やす行為ではありません。自分や家族の夢を実現するための手段です。その夢を家族と共有することで、投資はより意味のあるものになり、続ける励みにもなります。
また、家族と目的を共有すると、投資に対する不安や疑問も一緒に解決できます。一人で抱え込むのではなく、二人で考えることで、より現実的で納得できる計画を立てることができるのです。
初心者の方へ ー まずは目的を言葉にしてみませんか
もしあなたがこれから投資を始めようとしているなら、あるいはすでに投資をしているけれど目的が曖昧だと感じているなら、一度立ち止まって考えてみてください。
「あなたは何のために投資をするのですか?」
完璧な答えでなくても構いません。「老後の生活費」「子どもの教育資金」「マイホームの頭金」「趣味を続けるための資金」など、どんな目的でもいいのです。大切なのは、それを言葉にして、できれば家族と共有することです。
目的が明確になると、いくら必要なのか、どれくらいの期間で貯めるのか、どんな投資方法が適しているのかも自然と見えてきます。そして何より、投資を続けるモチベーションになります。
また、家族と目的を共有することで、投資への理解も得られやすくなります。「なぜ投資をするのか」が分かれば、家族も応援してくれるはずです。
今日から始められること
私がその日から実践していることをご紹介します。まず、投資ノートを作りました。そこには、自分の夢や目標、必要な金額、達成したい時期などを書き留めています。
そして月に一度、妻と一緒に資産状況を確認する時間を作るようにしました。数字だけでなく、「今月はこんなニュースがあった」「この投資信託はこういう方針で運用されている」といった話も共有します。
最初は妻も投資に詳しくなかったので、私が学んだことを少しずつ伝えていきました。すると妻も興味を持ち始め、今では一緒に投資の勉強をしています。
投資は一人でするものではありません。特に家族がいる場合は、その未来を一緒に描き、一緒に歩んでいくものです。目的を共有することで、投資はより確かな道標となってくれます。
夢を語る勇気を持とう
あの日、妻に投資の目的を聞かれて答えられなかったことは、今では良い経験だったと思います。あの瞬間があったからこそ、私は自分の夢と向き合い、それを言葉にする大切さを学びました。
投資の技術や知識も大切ですが、それ以上に大切なのは「何のために投資をするのか」という軸を持つことです。そしてその軸は、夢を語ることから始まります。
夢を語ることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、それが投資を続ける原動力になり、家族との絆も深めてくれます。あなたも今日、大切な人に自分の夢を語ってみませんか。きっと、新しい一歩が踏み出せるはずです。
一緒に、焦らず、自分らしく、投資を続けていきましょう。