その日は、いつもと同じ休日の午後だった
リビングのソファに並んで座り、スマホで投資口座の画面を見ていた時のことです。妻が何気なく「ねえ、これって結局いくらになったら何に使うの?」と聞いてきました。
その瞬間、ハッとしました。投資を始めて半年ほど経っていたのに、妻と「将来のこと」をちゃんと話したことがなかったんです。口座を開いて、毎月積み立てて、増えたり減ったりする数字を眺めて。でも、その先にあるものを、二人で共有していなかった。
「老後の資金かな…」と曖昧に答えた私に、妻は少し寂しそうな顔をしました。そして、「私たちって、将来どんな暮らしをしたいんだろうね」とポツリと呟いたんです。
お金の話は、人生の話だった
それから、私たちは初めて「将来」について、じっくり話し合いました。どこに住みたいか。どんな働き方をしたいか。老後はどう過ごしたいか。子どもがいたら、どんな教育を受けさせたいか。
話しているうちに気づいたことがあります。お金の話をすることは、実は「どう生きたいか」を話すことなんだ、と。
投資を始めたきっかけは「なんとなく将来が不安だから」でした。でも本当は、その不安の正体が何なのか、自分でもよくわかっていませんでした。妻との会話を通して、私が求めていたのは「お金」そのものではなく、「安心して暮らせる未来」だったんだと、ようやく理解できたんです。
投資の本質は「未来を描くこと」
投資というと、どうしても「増やすこと」に意識が向きがちです。でも、もっと大切なのは「何のために増やすのか」を明確にすることだと、あの日の会話で学びました。
私たちの場合、こんな目標が見えてきました:
- 60歳までに住宅ローンを完済して、身軽になる
- 65歳からは週3日だけ働いて、趣味の時間を持つ
- 年に一度は夫婦で旅行に行く
- 子どもが独立したら、少し小さな家に住み替える
こうして言葉にしてみると、「老後資金2000万円」という漠然とした数字ではなく、「私たちらしい人生を送るためのお金」として、投資が具体的なものになりました。
最新の調査でも、夫婦で将来設計について話し合うことの重要性が指摘されています。お金より先に「どんな生き方をしたいか」を共有することで、投資の目的が明確になり、無理のない資産形成ができるようになるそうです。
読者のみなさんへ ー 一緒に話してみませんか
もし今、一人で投資をしているなら。あるいは、パートナーに「投資を始めたい」と言い出せずにいるなら。ぜひ一度、「将来どう暮らしたいか」を話してみてください。
投資の話は難しく感じるかもしれません。でも、「どこに住みたい?」「何歳まで働く?」「趣味にどれくらいお金をかけたい?」という問いかけなら、自然に会話が始まるはずです。
お金の話をすることは、決して無機質なことじゃありません。むしろ、お互いの価値観や夢を知る、とても温かい時間になります。
私たち夫婦の場合、投資を始めたことで、逆説的ですが「お金よりも大切なもの」が見えてきました。それは、二人で一緒に歩んでいく未来そのものでした。
まとめ
あの日、妻の何気ない一言がなければ、私は今も「増やすこと」だけを目的に、ただ数字を追いかけていたかもしれません。
投資は手段であって、目的ではありません。大切なのは、その先にある「自分たちらしい人生」を描くこと。そして、それをパートナーと共有すること。
お金の会話は、未来への扉を開く鍵になります。焦らなくていい。完璧じゃなくていい。少しずつ、二人で話し合いながら、一緒に歩んでいきましょう。
きっと、投資がもっと意味のあるものになるはずです。