口座開設の高揚感と、その後の沈黙
あれは今から2年ほど前の春のことでした。
ずっと気になっていた投資を、ついに始める決心をした私は、ネット証券の口座を開設しました。本人確認の書類を撮影して、必要事項を入力して、数日後には「口座開設完了」のメールが届きました。
そのときは本当に嬉しくて、「これで自分も投資家の仲間入りだ」なんて思っていました。でも、その後すぐに気づいたんです。
口座を開いただけでは、何も始まっていないということに。
そこからの3ヶ月間、私は投資口座にログインすることすらしませんでした。開設完了のメールが届いてから、ただただ時間だけが過ぎていったのです。
なぜ放置してしまったのか ー 見えない壁
口座を開設したのに、なぜ何もできなかったのか。今振り返ると、いくつかの理由が見えてきます。
まず一つ目は、「どこから始めればいいのか分からない」という迷いでした。投資信託を買うのか、株式を買うのか、どの銘柄を選べばいいのか。調べれば調べるほど、情報の多さに圧倒されてしまいました。
二つ目は、「失敗したらどうしよう」という不安です。せっかく貯めたお金が減ってしまったらと考えると、なかなか行動に移せませんでした。
そして三つ目は、「まだ準備が足りない」という完璧主義でした。もう少し勉強してから、もう少し知識をつけてから。そう言い訳しながら、結局何もしない日々が続きました。
気づけば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月。口座開設の高揚感はすっかり消えて、「自分には投資は向いていないのかもしれない」とさえ思うようになっていました。
小さな一歩を踏み出した日
そんなある日、友人との会話がきっかけで、私は久しぶりに投資口座にログインしてみました。
画面を開いてみると、思っていたよりもシンプルで、分かりやすいインターフェースでした。そして、ふと思ったんです。
「完璧じゃなくていいから、まず小さく始めてみよう」と。
その日、私は月1万円の積立投資信託を設定しました。銘柄は、初心者向けと言われているバランス型のファンド。特に深く考えず、「とりあえずこれで始めてみよう」という気持ちでした。
設定を完了した瞬間、不思議と肩の荷が下りたような気がしました。3ヶ月間も悩んでいたことが、実際にやってみたら10分もかからなかったのです。
投資の本質は「行動すること」
この経験から、私は投資について大切なことを学びました。
投資というのは、知識を蓄えることも大事ですが、それ以上に「行動すること」が大切なんだと気づいたのです。
完璧な知識を持ってから始めようとすると、いつまで経っても始められません。なぜなら、投資に「完璧な正解」なんてないからです。市場は常に変化し続けていて、どんなに勉強しても未来を完全に予測することはできません。
それよりも、小さく始めて、実際に体験しながら学んでいく方が、ずっと成長できるのだと思います。
また、「始めるハードル」と「続けるハードル」は違うということも分かりました。口座開設は大きな決断でしたが、それだけでは何も変わりません。その後に、定期的に積み立てを続けたり、時々ポートフォリオを見直したりする「継続の習慣」が必要なのです。
今、投資口座を開いたばかりのあなたへ
もし今、私と同じように口座を開設したけれど次の一歩が踏み出せずにいる方がいたら、こう伝えたいです。
完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは小さく始めてみましょう。
月1,000円からでも、月3,000円からでもいいんです。金額の大小ではなく、「投資を始めた」という事実が、あなたの未来を変える第一歩になります。
また、最初に選んだ銘柄が最適解である必要もありません。投資は走りながら学ぶものです。実際に始めてみて、自分に合わないと思ったら変更すればいいだけのことです。
大切なのは、行動を起こすこと、そして続けること。その二つだけです。
まとめ ー 投資は「続ける」ことで花開く
あの3ヶ月間の放置期間は、決して無駄ではなかったと今は思います。なぜなら、その経験があったからこそ、「行動することの大切さ」を心から理解できたからです。
投資は、始めるのも勇気がいりますが、続けることはもっと難しいかもしれません。でも、一度動き出してしまえば、意外とスムーズに進むものです。
今は、あの日設定した積立投資が、自動的に毎月続いています。市場が上がったり下がったりするたびに一喜一憂することもありますが、それも含めて投資の醍醐味だと感じています。
もしあなたが投資口座を開設したまま、次の一歩を踏み出せずにいるなら、今日がそのタイミングかもしれません。深く考えすぎず、まずは小さく始めてみませんか。
一緒に、ゆっくりと、投資の道を歩んでいきましょう。