あの日、私は初めて「売る」ボタンを押した
投資を始めて1年が過ぎた頃、ある投資信託の基準価額が購入時から15%ほど上昇していました。画面に表示される「+〇〇円」という文字を見ながら、私はスマホを持つ手が少し震えていたことを覚えています。
「このまま持ち続けたらもっと増えるかもしれない」
「でも、明日下がったらどうしよう」
「せっかく出た利益を逃したくない」
カフェの窓際で、冷めたコーヒーを前に、私は何度も売却画面を開いては閉じてを繰り返していました。買う時はあんなに勇気を振り絞ったのに、売る時もこんなに悩むなんて思ってもいませんでした。
利益が出ているのに、なぜこんなに不安なのか
結局その日、私は半分だけ売却するという中途半端な決断をしました。でも不思議なことに、売った後もまったくスッキリしなかったんです。
翌週、残りの保有分がさらに5%上昇しました。「やっぱり全部売らなくて良かった」と安心したのもつかの間、その翌月には元の水準まで戻ってしまいました。「あの時全部売っておけばよかった」と後悔の念が湧いてきます。
私はそこで初めて気づいたんです。投資で一番難しいのは、「売るタイミング」なのかもしれないと。
人は利益を早く確定したくなる生き物
後で知ったのですが、これは「プロスペクト理論」という行動経済学の考え方で説明できるそうです。人は利益が出ている時は「確実に手に入れたい」と思い、早めに売ってしまう傾向があります。逆に損失が出ている時は「いつか戻るかも」と期待して、なかなか損切りできないのだとか。
つまり、私たちの心は投資に向いていないんです。だからこそ、自分の感情と向き合いながら、冷静に判断する練習が必要なんだと思います。
売るタイミングは「自分の目的」で決めていい
それからしばらく悩んだ末、私はシンプルな答えにたどり着きました。
「なぜ投資を始めたのか」に立ち返ることです。
私の場合、投資の目的は「老後の資金を作ること」でした。ということは、今すぐ利益確定する必要はないんです。目先の上げ下げに一喜一憂するよりも、コツコツ積み立てて長期で育てていく方が、自分の目的に合っています。
もちろん、マイホームの頭金を貯めているとか、数年後の子どもの教育費に備えているなど、明確な使い道があるなら、目標額に達した時点で利益確定するのが正解です。
大切なのは、「誰かの正解」ではなく「自分の正解」を持つことなんだと気づきました。
あなたへのやさしいアドバイス
もしあなたが今、利益確定のタイミングで悩んでいるなら、こんなふうに考えてみてください。
- 投資の目的を思い出す: 何のために投資を始めましたか?その答えが売るタイミングのヒントになります
- 全部売らなくてもいい: 迷ったら半分だけ売却するのも一つの方法です
- 完璧を求めない: 最高値で売ることは誰にもできません。「そこそこの利益」で十分です
- 後悔は成長の証: 売った後に上がっても、売らずに下がっても、その経験があなたの投資力を育ててくれます
私自身、あの時の決断が正しかったのかは今でもわかりません。でも、悩んで、考えて、決断したという経験そのものが、今の投資スタイルを作ってくれたと思っています。
まとめ ー 売ることも、投資の一部
投資は買うことだけではありません。売ることも、大切な投資行動の一つです。
初めて利益確定をした日の複雑な気持ちは、きっと多くの人が経験することだと思います。その時の不安や迷いは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、真剣に投資と向き合っている証拠です。
焦らず、自分のペースで。そして何より、自分の目的を見失わないように。
一緒に、少しずつ学んでいきましょうね。